筑摩選書<br> 日本の包茎 ――男の体の200年史

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筑摩選書
日本の包茎 ――男の体の200年史

  • 著者名:澁谷知美【著】
  • 価格 ¥1,595(本体¥1,450)
  • 筑摩書房(2021/04発売)
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  • ISBN:9784480017239

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内容説明

仮性包茎は医学上、病気ではなく、手術も不要である。日本人男性の半数以上が仮性包茎とされている。多数派であるのに多くの男性がこれを恥じ、秘密にしようとするのはなぜか。そのままでは女性に嫌われると一部の美容外科医は言い募り、男性による嘲弄の対象ともなってきた。仮性包茎を恥じる感覚は、どのようにして形成されたのか。江戸後期から現代まで、医学書から性の指南書、週刊誌まで、膨大な文献を読み解き、仮性包茎をめぐる感覚の200年史を描き出す。歴史社会学者による本邦初の書!

目次

序章 なぜ仮性包茎の歴史なのか
多数派なのに恥ずかしい
未開拓な「恥の感覚の歴史」
「包茎」を定義する
性の史的言説分析とは?
第1章 恥と包茎──一九四〇年代半ばまで
1 恥の感覚
包皮をたくし上げる男たち
恥と暴力
包茎商売
恥と知識の不在
2 仮性包茎の誕生
仮性包茎というカテゴリー
仮性包茎に手術は不要
皮が男性にもたらす快楽
皮が女性にもたらす快楽
包茎と短小は関係ない
仮性包茎にきびしい意見
「仮性包茎」は医学用語ではない
3 包茎増加論
「割損」の衰退と包茎
オナニー原因説
包茎からはじまるオナニー
結婚と包茎
4 「ペニスは本来包茎か」論争
銭湯・スパイ・包茎
「露茎が本来」説
「包茎が本来」説
5 包茎の誕生
包茎と皮被り、この似て非なるもの
江戸の包茎
包皮の発見
第2章 包茎手術の商品化──戦後の混乱期から一九六〇年代まで
1 性器整形ブーム
「見つかった」仮性包茎
美容整形の流行
性器整形ブーム
性器整形の失敗
2 短小と包茎
包茎手術をすれば大きくなる
敗戦と短小
陰茎ナショナリズム
3 早漏と包茎
早漏の問題化、夫婦間性行動のエロス化
「早漏」は定義不可能
デリケートな亀頭、包皮という保護膜
4 精神衛生と包茎
神経衰弱と包茎
子どもっぽさと包茎
不良少年と包茎
5 包茎の「常識」のリニューアル
結婚は包茎を治さない
包茎は童貞の証ではない
オナニーは包茎をまねかない
第3章 青年と包茎──一九七〇年代から九〇年代まで
1 仮性も手術が必要論
タイアップ記事の王国
ターゲットとなった仮性包茎
データ不在の包茎記事
手術の「見える化」
2 女の意見、あるいはリアルな女の不在
「包茎は不潔だ」
男が男から金を巻き上げるシステム
ボクらは他の男の勃起を知らない
女の無知を嗤う
3 男の視線──包茎をめぐる男性間ヒエラルキー
「包茎は男にあらず」
最下層カーストとしての包茎男性
見る男、見られる男
包茎をめぐる男性間カーストの表象
女にやられるとムカつく
4 仮性に手術は不要論
手術はコンプレックスを解消しない
「ラップ」としての包皮
肯定のなかにある「しんどさ」
5 包茎手術は「心の手術」論
精神的包茎
マッチポンプとしての包茎言説
第4章 中高年と包茎──一九八〇年代から現代まで
1 「侮蔑」から「肯定」へ──中高年というターゲット
包茎手術を受ける若者をバカにする中高年
急に若者を褒めだす
タイアップ記事と岡和彦
包茎に悩む中高年の登場
仮性包茎の問題化と「放置」の禁止
2 ゴルフ言説──仕事能力と包茎
取引先の股間を見る
ついて回る風呂という「地獄」
3 お棺言説──「死ぬよりつらい」包茎
老人は死して皮を残さず
動機としてのお棺
4 介護言説──ケアされる身体と包茎
「介護される時に恥ずかしい」
羞恥心の奥底にあるもの
5 バカにする女、支える女──男性誌における女性像の偏り
包茎を批判する「女の意見」
包茎の夫を支える「女たち」
終章 包茎手術のたそがれ
1 ひとつの時代の終わり
手術への後悔
手術の不要性と消費者問題
「包茎は過去の商品」
2 男性身体の解放のために
仮性包茎はいつどのようにして恥になったのか
男性間の支配関係とジェンダー不平等
「男の生きづらさ」再考
包茎をバカにしない性教育
新たな男性身体イメージの構築
あとがき

引用文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

1959のコールマン

71
☆5。仮性包茎イデオロギーが表のテーマだが、裏のテーマは「男が男を支配するイデオロギー」「男の生きづらさの正体」だろう。男らしさ、男の理想像、ふん、そんなもんと無視出来る男はほぼいない。だから仮性包茎イデオロギーを煽られるとひとたまりもない。無視しても心の深い所に絡め取られてしまう。そして生きづらさ、プレッシャーからくる不満は実際のクリニック、メディアに向かわず、自分という弱者に向かう。自己嫌悪のスパイラルに落とされる。こう考えると、世の中に溢れる「差別の構造」の典型のようなケースだ。↓2021/03/04

TATA

39
興味本位で手に取ってみたのだが、こんなテーマなのに中身はとっても真面目な社会&ジェンダー論。男性の身体の暗部をいかに焚き付けて商売にしてきたか。たしかに自身が学生の頃は巷にそういった宣伝が蔓延してたな。一部の医師と一緒になって祭り上げた雑誌はほぼ廃刊。人のコンプレックスにつけ込むタイアップ広告で稼いでいたようなメディアは長続きできるわけもないということ。軽佻浮薄なあの時代を懐かしむのか、はたまた嘲笑するのか。2021/09/12

おかむら

33
ちょっと(かなり?)手に取りにくいタイトル(もしかして男性の方がもっと?)ですが、とても面白い歴史社会学の本。日本の包茎の200年史。日本人男性の6割を超えるという仮性包茎はなぜ恥ずかしいものとなったのかを、豊富な文献資料から紐解く。明治時代から戦前までのトンデモ研究や珍説も楽しいし、戦後の青年誌上に頻出した整形クリニックのタイアップ記事の検証は面白すぎる。包茎ビジネス恐るべし。高須めー! よく知らなかったセンシティブな男の生きづらさの世界を垣間見れました。2021/03/14

遊々亭おさる

26
日本人男性の内、半数以上が仮性包茎であり医学的には病気ではなく手術も必要としない。にも関わらず男は包茎を恥じ、他者から一人前と認められないと思うのは何故か?戦前から現代までの文献から捏造により仮性包茎が差別され続けてきた歴史と要因を読み解き、生きづらさの原因ともなる日本男児と大和撫子から自由になろうと説く一冊。北極でアイスクリーム屋を繁盛させるような美容整形医のメディアを使った広告戦略はビジネスマンの逞しさは感じるものの医者の倫理としてはどうなのと。男の幸せと女の幸せの両立は男性器神話から自由になること。2021/04/17

Nobu A

18
澁谷知美著書初読。2021年初版。筆者所属の東京経済大学HPで見かけて手に取った。真面目な本だとは判っていたが、公共交通機関では読めないタイトル。何故男性でなく女性が研究テーマにしたのかと言う疑問もあとがきで明かされる。M検で男性ペニスに関するデータが豊富にあった戦前期から現代までの歴史を振り返り、美容整形外科医が包茎手術の商品化の為にどのような言説をどのように流通させたかを検証及び考察。読み易い筆致で巻末の30頁超の参考文献から研究者としての矜恃も伝わってくる。一皮剥けた気がする。心がだよ。久々の良書。2022/08/20

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