内容説明
福島原発事故後/コロナ禍以後の社会のあるべき姿を見据え、国策民営のリニア計画の暴走が体現する諸問題を指摘する。直球の提言。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
95
こんな頭のいい人はいないと心から尊敬する山本義隆さん。「原発、リニア新幹線、東京オリンピック、大阪万博」…みんな同じ構造だという。国を中心とする利権構造によってプロジェクトが推進される。福島事故やコロナ禍で社会構造が変わっても、只管突き進む。リニアが東海道新幹線の5倍もの電力を消費し、液体ヘリウムや灯油を積載する危険や、超伝導のクエンチ対策などの技術的課題を残している事実も突き付けられる。ポスト資本主義として脱成長、地方分権、環境調和が求められる中で、リニア新幹線は「大国主義ナショナリズム」の幻影である。2021/07/10
きみたけ
64
正直に言うと、リニア一度は乗ってみたいな~程度で、リニアに対するデメリットやリスクについて全く考えてませんでした、反省です。。コロナ禍の今こそリニア中央新幹線計画の見直しを訴える一冊。第一に、新幹線の4~5倍ものエネルギーを消費するリニアの営業は原発の再稼働や新設が不可分であり、本来ならば福島の原発事故の時点で即時見直さなければならなかった時代錯誤のプロジェクトであること。第二に「国威発揚」「技術立国」のためという国家的メンツを匂わす事業で、モリカケと並ぶ安倍さんの肩入れ事業であることが問題。2022/08/04
もりくに
63
元々、時間だけは充分に余っている老人だし、列車に乗れば、車窓に映る景色を見るのが何より好きな身には、在来の新幹線でさえ、トンネル多いと思ってるのに、ほとんどトンネルばかりの「リニア」には、「勝手にやって」とは思いながら、今時こんな超大プロジェクトが、本当に私に無関係なんだろうかとは思っていたので、常に論旨クリアな物理学者の山本さんの本読んでみた。そしたら、「やっぱりだった!」。2024/09/04
壱萬参仟縁
58
このところ、TN工事事故でけがや死者が出ていることから、看過できない。著者は予備校講師や科学史家。私は辞めた方がいいと思うのは、富士山噴火のリスク。できたとしても、緊急避難出口までどうやって逃げるのか? あるいは、緊急停止まで何秒、何分かかって停車できるか? という意味で、危険極まりない乗り物ということ。時速600キロで9割TNの暗闇地獄を40分も? とんでもない。リニアと原発の関係(22頁~)。ますますあかん。2022/01/19
読特
32
2つの構造線を貫く地下トンネル。乗っていた車両に事故発生。300mの高低差を登り、命からがら脱出できたがそこは冬山。救助到着はいつになるのか・・。想像するに恐ろしい。超高速を生み出すのは超電導。機構の複雑さが、故障確率を上げる。最新技術の超特急だが、「乗ってみたい!」と思わない人が35%。その気持ちも肯ける。全長247kmのトンネル掘削。残土運搬のトラックは1日8000台、それが何年も続く。環境破壊に一役買いたくない。リモート環境定着で移動の需要も減った。行きつく先は破綻の道。リニアは世界をリードしない⇒2022/02/20