内容説明
スターリン体制下のレニングラード。人民警察の警部補ロッセルは、捜査を進めるうちに、連続殺人犯の正体を突き止められるのは自分しかいないと気づく。元ヴァイオリニストの自分しか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鱒子
83
スターリン統治下のレニングラード。人民警察に勤めるロッセルは常軌を逸した殺され方の、5つの死体が横たわる現場へと呼び出された。死体のうちひとつは国家保安省の人物らしく……。不安しか感じない前半部分に釘付けでした。特に惹かれたシーンは、主人公がヴァイオリンを構えるところです(解説にも出てくる)。ここは本当に素晴らしかった!大物政治家や音楽家が実名で出てくるところも、この時代のソビエトの空気を増幅させています。2021/05/10
Panzer Leader
73
スターリンの恐怖統制下のレニングラードで発見された五人の惨殺死体。捜査の中心となる人民警察の警部補は、将来を嘱望バイオリストながら、粛清の対象となり拷問を受けた上レニングラード防衛のための督戦隊に配属されたとの強烈な過去を持つ。捜査の進む中国家保安省の横槍が入りだし、主人公らは自らの身を守るのも窮々となる,,と掴みと捜査の進み方は非常に良いのに犯人・動機が明かされると何か着地に失敗したかなと思わせるラストに。しかし主人公のキャラは魅力的な上、この時代のソ連の閉塞感を上手く描いているので次作も期待してしまう2022/03/13
パトラッシュ
73
密告と粛清が横行し誰も信じられないスターリン独裁期のソ連は、犯罪捜査にそぐわぬ政治的暴力が吹きすさぶ。特にレニングラードの共産党指導部が粛清された有名な事件直後に起こる猟奇殺人とは、どちらがより悪夢なのかわからなくなる。しかも探偵役のロッセルは拷問で将来を絶たれた元音楽家で、自分を痛めつけた秘密警察将校と共同で捜査する羽目になるのだから。十重二十重に枷をはめられたロッセルがわずかな伝手をたどり真相を探るドラマは、警察小説として始まりながら20世紀の狂気に満ちた社会を描く壮大な政治小説へと変貌していくのだ。2021/06/06
猿吉君
67
いろんな要素がミックスされているがなんと言ってもスターリンな時代背景が壮絶です。①容姿端麗で元音楽家で実はめちゃ強くてモテる、羨ましいじゃないか!の主人公、悲惨な目に遭ってもなんかこう(笑)②大仕掛けな謎は私はアリだと思いました。③脇役が魅力的なのですがチョイ生かしきれてないような。④最後の締めはちょっと不満、続編を睨んでああなのか。点数75/100→設定とか途中とかは凄く良いのですが全体的に流行りの良いとこ取りなのが少し気になりました、もう少しネタを絞っても。が!面白かったので続編出たら読みます。2022/04/14
stobe1904
35
【スターリン統治下の警察小説】1951年旧ソ連レニングラードが舞台。元エリートバイオリニストで人民警察警部補ロッセルが線路上に横たえられた5人の凄惨な殺人事件を追う。国家保安省の拷問で指を失いバイオリニストとしてのキャリアを絶たれたロッセルが、国家保安省の捜査介入とプレッシャーを受けながら政治的に正しい捜査と事件の真相を追い求めるせめぎ合いが圧倒的だった。恐怖政治下の陰鬱なトーンをベースに音楽の芸術性と猟奇的な事件の奇妙な融合がすばらしい。ユニークで読み応えのあるこの作家の次作がとても楽しみ。★★★★★2021/06/30
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