内容説明
高校の同窓会に出席する予定の小説家・日能は、幹事から衝撃の事実を聞く。ずっと亡くなったと思っていたクラスメイトが、実は生きていたのだ。何をどう勘違いしてそう捉えていたのか、訝しみながら同窓会当日を迎えると、さらに謎は深まるばかり……「蓮華の花」。数年ぶりに訪れた書店で購入した文庫本に、謎のメッセージが挟まれており、そこから小学生時代のある出来事に結びつく「時計じかけの小鳥」。師と仰ぐ、都筑道夫の代表作〈退職刑事〉シリーズのパスティーシュ、「贋作『退職刑事』」など、論理的な謎解きにこだわった、六編を収録。/【収録作】蓮華の花/卵が割れた後で/時計じかけの小鳥/贋作「退職刑事」/チープ・トリック/アリバイ・ジ・アンビバレンス/集英社文庫版解説=巽昌章/創元推理文庫版解説=阿津川辰海
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
geshi
33
『蓮華の花』追憶の殺人を変形した謎に西澤テイストな落としを決める。『卵が割れた後で』一旦解決させてから捻りと混乱を加え思わぬ論理の刃が見事に切り込む。『時計じかけの小鳥』一冊の本から出た紙が隠された事件と思惑に繋がり「小鳥」のオチが決まる。『贋作「退職刑事」』会話主体のテンポとちょっとした下世話さ、リスペクト高いなぁ。『チープトリック』こういったハウダニットに絞った作品は珍しい。『アリバイ・ジ・アンビバレンス』謎の魅力と論理によって情念が浮かび上がるアンビバレンス状況のスライドの巧さ。2021/06/22
NAOAMI
19
「謎と論理」と銘打っているだけに、いくつもの推理に明快な論理検証を加え、可否を問い詰め解決に結ぶ展開がキッチリ固められている。謎解き者が=探偵ではなく「チープトリック」のように真犯人が解き明かす流れも面白い。オチとして結末を全て語り尽くす訳でもなく、想像の域に留まるものも多く、この手の短編集にはありがちな引っ張りと余韻が利いている。古今東西・和洋の舞台設定などバリエーションあり、高校生が推理するもの、退職刑事が「安楽椅子探偵」となるもの。短編ごとの味わいに振り幅広く。著者のミステリ領域の広さと深さに感服。2021/09/02
アプネア
17
フーダニット、不可能犯罪、トリック、アリバイ崩し、などなど、論理的な謎解きに拘った6つの短編集。お気に入りは「蓮華の花」:同窓会で死んだと思っていた同級生が実は生きていたことが分かる。一体、どうしてそう記憶していたのか・・・。「卵が割れた後で」:海外ミステリぽく非常に好み。作者の概略をみると経歴の背景が透けて見えるような・・・。2021/07/29
有理数
13
西澤保彦の独立短編集で、毛色の異なる本格推理が楽しめる。パズラーにおける「あちらを立てればこちらが立たず」という前提の隙間を縫うような論理と推理の太刀筋、それが最も色濃く表れていると思うのは、本当に英米ミステリの邦訳と見紛う「卵が割れた後で」、都筑道夫パスティーシュ「贋作「退職刑事」」、高校生コンビが奇妙なアリバイに挑む推理合戦「アリバイ・ジ・アンビバレンス」あたりで、「アリバイ~」は特にパズルがカチッとハマった上で現れる真実が素晴らしい。「卵が~」も試行錯誤の様がまさしくパズラー。面白い短編集です。2021/07/03
ツバサ
12
ミステリーとして倫理的に事件の真相に迫っていく過程にある議論がどの話も魅力的でした。各話登場していく人物達に味があり、話に入りやすかったです。解決した後の余韻も後に残るものばかりです。先生の他作品も読んでいこうかなと。ブログにて→ https://wing31.hatenadiary.jp/entry/2021/06/05/2100002021/06/04