内容説明
「日本文化の基層は弥生人が作った」「大化改新で悪玉の蘇我氏が成敗された」――。この種の「通説」は旧態依然のまま半世紀前と変わらない。それを乗り越えるためには、考古学の知見を生かした上での、大胆な推理が必要となる。「神武と応神は同一人物」「聖徳太子は蘇我入鹿」「壬申の乱は親蘇我と反蘇我の闘い」など、透徹した目で古代史の真実に迫ってきた筆者のエッセンスを一冊に凝縮した、初めての通史。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tamami
51
歴史の一幕を大胆に推理し、鮮やかに解き明かすという手法が多かった著者の、本書は日本の古代史総まくりと言える巻である。いわゆる邪馬台国論争を不毛なものと切り捨てる著者は、思い込みによる学説の沈滞を排するとともに、日本古代史に関わる多くの謎について、それぞれに作家の目を通した仮説を展開する。本書のキーワードを挙げるとすれば、「文献史学と考古学の融合」、「日本書紀編纂の主体は藤原不比等だった」の二つと言うことになるだろう。これまで漫然と読んでいた教科書的な歴史記述にも、全く新しい光が射してくるように思われる。2021/04/21
mim42
13
はにわ展を観て熊野詣をしたら、古代史に興味を持っていた。 私は古代史というか日本史全般的に中卒レベルなので新鮮だった。蘇我氏=悪, 中大兄皇子=正義、というのは一義的な歴史解釈であり、兵庫県知事=パワハラ・おかわり、を彷彿。 おそらく私の知識不足のせいで、どこまでが共通見解で、どこからが著者独自の仮説なのかがわからなかった。他の著者の本も読んでみたい。 また、文献学者と考古学者が折り合い悪しという点に大変興味を持った。ドローンや機械学習、年代・材質・地域を特定する技術の進化にも興味を持った。2024/11/19
Makoto Yamamoto
12
歴史小説家らしく大胆な切り口で古代日本を解き明かしている。 これまでの通説、稲作は一気に広がったのではなく百年単位での広がりだったことを解き明かしたり、大化の改新の裏物語を暴露したり、面白く読ませてもらった。 ただ、神武天皇と崇神天皇を同一人物とするのは無理があると思う。 仁天皇時代は春秋暦(1年を2年とと数える)だったので、ここは日本書紀、古事記の記載を認めてはと思う。 蘇我、物部氏と中臣家(藤原)の関係は興味深く読ませてもらった。 2021/06/07
fseigojp
7
やはり古代史から中世のはじまりまではスパンがひろすぎ2023/07/01
coldsurgeon
6
日本の古代に関する知識は、考古学的な新しい知見や文献上の新しい解釈により、少しづつ更新されているようだ。日本人の由来、縄文時代と弥生時代の併存など、話題は面白い。乙巳の変から壬申の乱に至る経緯は、様々な説が飛び交い、それを検証するだけでも、楽しみながら知識の更新ができた。2021/06/01