内容説明
1940年、秋田県田沢湖だけに生息した魚が環境改変で絶滅した――。だが、生きていた。遠く離れた山梨県西湖で。なぜ西湖に? なぜ誰も気づかなかったのか? クニマスという魚の驚くべき生態から生まれた疑問が発見を導き、分類学、ダーウィン進化論、そして絶滅に向きあった人々の歴史へと広がってゆく。「種」を巡る壮大な物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
なま
13
★4 2020年まで中1単元になっていた『幻の魚は生きていた』で紹介されたクニマスの情報が詳細に載っている。本書で脈々と引き継がれていく記録データの大切さ、執念とも言える研究者の情熱を感じた。 専門家でさえ見分けが難しいというクニマスの雄・雌のカラー写真もあり。さかなクンはイラストレーター、宮澤正之(本名)で掲載されている。私には専門的過ぎる内容では有るが、文体的には読みやすい。クニマスを調べるなら絶対、この本。2021/06/20
六点
11
田沢湖固有の魚で、強酸性水の導入により滅んだ魚が西湖で再発見されたニュースは記憶に新しいところである。が、移出されたクニマスは本栖湖のヒメマスと雑種になっている事が遺伝子解析で明らかになった事は知らなかった。絶滅も環境破壊というは容易いが、仙北盆地に用水を引くため、田沢湖の水で天然由来成分に満ち溢れた強酸性河川水をうめる必要があったことも、この問題の複雑さを物語る。西湖のクニマスは「今のまま、ほっておく」と言うは易いが、保全の努力をせねばならぬということである。…いつか、養殖に成功すれば良いとはいうまいぞ2021/06/11
toshi
11
学術書なのでなるほど・・と思うしかないけれど個人的には「興味深い内容を分かり易く解説した本」と言ったところ。読んで一番驚いたことは、今まで何度も短い解禁期間に釣りに行った本栖湖のヒメマスが実はほとんどがヒメマスとクニマスの混血だったという事実。本は2部構成で、第一部は主に自然科学的な内容で説明や解説が多い。第2部は歴史や社会科学、人文科学的な内容になっている。昔近所の釣具屋さんの店頭にクニマス探しキャンペーンのポスターが貼ってあるのを見てはじめてクニマスの存在を知ったが、まさかその後本当に発見されるとは。2021/06/08
もだんたいむす
5
さかなくん目的で購入したが、言及はちょっとだけ。ほとんどそれぞれの湖とヒメマスとクニマスの生態とかの話とマスコミの報道の訂正。2023/09/30
Hiroki Nishizumi
4
学者らしい冷静で静かな語り口調。移植放流も悪いことばかりではないわけだな。2023/02/24