内容説明
アルコール依存症の母親をもつ柳岡千明は、退院後の母親が入所する施設「セゾン・サンカンシオン」へ見学に行く。そこは、さまざまな依存症に苦しむ女性たちが共同生活を行いながら、回復に向けて歩んでいくための場所だった。迷惑を掛けられてきた母親に嫌悪感を抱く千明だが、施設で同じくアルコール依存症を患っているパピコとの出会いから、母親との関係を見つめなおしていく――。人間の孤独と再生にやさしく寄り添う感動作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みどどどーーーん(みどり虫)
147
読み友さんのレビューから♡私が本を読むのは単純に楽しみたいのと、もう一つは知りたがり欲を満たす為。これは後者で、参考資料の多さを見て、この物語を書いてくれた著者に感謝の気持ちで頭が下がる程。様々な依存症、何かのきっかけで誰もがなる可能性がある。辛いのは他の病気よりも理解されにくく、近い関係の者でさえ「看病する」だの「共に闘おう」だのと思い難いことだろうか。命に直接関わりがなくても失なうものは大きい、犯罪に繋がることもある、悲しくて怖い病気だ。知るって大切。依存症は性格の弱さやだらしなさじゃない、病気です。2021/06/21
モルク
114
ギャンブル、窃盗、薬、アルコールなど様々な依存症の女性たちが暮らす自助グループ施設。施設で暮らす人やその家族そして生活補助員の塩塚を描く連作短編集。その合間に出てくる主婦がアルコール依存性になっていく話に引き込まれる。そしてそれが意外な形で関連する。生き辛さや身体や心の痛みを忘れるため陥ってしまう罠。今日はやめよう、でもあと一回(一杯)だけ…そしてもう一回(一杯)だけ…ドミノのように生活、家族が巻き込まれる。一生闘いつきあわなければならない依存性。そこが一番怖いところ。重いテーマだが読んでよかった。2021/06/17
ゆみねこ
91
アルコール・薬物・ギャンブル・摂食障害からの窃盗症。様々な依存症と向き合い自立を支援する施設「セゾン・サンカンシオン」そこで暮らす女性たちと生活指導員。各章の間の#の構成が絶妙。依存症は家族を巻き込み迷惑をかける病気。巻き込まれる家族も辛く苦しいし、寂しくて生きづらい人が依存症になる。重苦しい読書になったけど読んで良かった。2021/08/29
ゆのん
86
テーマは『依存症』。ほとんど知らなかった依存症という病。読んでいてずっと胸が苦しくなる程の実態を知る事が出来た。とは言っても何の依存症も経験していないのだから真に知ったとは言えない。それでも依存症という病を知る事、辛さを想像する事や、偏見を持たない事は出来るのでは。依存症を抱えている人は決して弱いからではない。むしろ、周囲の人間は何をしていたのか…。心が砕け散る程の苦しみ、依存症と戦う苦しみ、周囲に理解されない辛さ、そして自己嫌悪の連続。読んでいて、心の悲鳴に耳を傾けてと叫びたくなる。2021/04/16
そら
77
悲しかったし、苦しかった。アルコール、ギャンブル、窃盗、薬物…様々な依存性に向き合いながら、共に更正するための施設「サンカンシオン」で暮らす女性たちの物語。私の身近では依存性患者はいない。そういう人たちがいることを知ってはいるが、"病的だ"と眉間にシワを寄せても"病気だ"と理解してあげることはやはり難しい。止められないのは自我が弱いからとか、自分のせいでしょと在り来たりな感情が出てしまう。でも、こんなにも苦しく辛い"病気"が人生を壊してしまうなんて、ただ悲しく思う。心の病は難しいが、知ることで理解したい。2021/06/22