内容説明
一人ひとりが〈私〉意識を強く持ち,他人とは違う自分らしさを追い求める現代.分断された〈私〉と〈私〉を結びつけ,〈私たち〉の問題を解決するデモクラシーを発展させることは可能なのか.人々の平等意識の変容と新しい個人主義の出現を踏まえた上で,〈私〉と政治の関係をとらえなおし,これからのデモクラシーを構想する.
目次
はじめに┴第一章 平等意識の変容┴1 グローバルな平等化の波┴2 可視化した不平等┴3 「いま・この瞬間」の平等┴第二章 新しい個人主義┴1 否定的な個人主義┴2 「自分自身である」権利┴3 自己コントロール社会の陥穽┴第三章 浮遊する〈私〉と政治┴1 不満の私事化┴2 〈私〉のナショナリズム┴3 政治の時代の政治の貧困┴第四章 〈私〉時代のデモクラシー┴1 社会的希望の回復┴2 平等社会のモラル┴3 〈私〉からデモクラシーへ┴むすび┴参考文献┴あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
樋口佳之
60
現代において個人主義は〈私〉の個人主義ですし、平等は〈私〉の平等です。価値の唯一の源泉/この時代のデモクラシーの可能性を語るお話(まるで講演会を聞いているような)でした。/語られている歌の話で思ったのが、同じ「僕が僕である」って歌う91年の槙原敬之と83年の尾崎豊。再帰的近代の進展スピードというか、10年を経る事無く正しさを求めず、闘わなくなってます。「もともと特別なオンリーワン」とか、んー?と思う所あるけれど、現代は徹底して〈私〉から出発している事に重々気をつけないと色々な軋轢生みそう。 2022/02/05
安南
36
政治哲学などの分野は、難しそうと敬遠していたが、こちらは新書ということもあるが、無知な私でも興味深く読むことができた。頷くことしきりで、薄い新書が付箋だらけに。この短い感想欄ではまとめきれない。まとめたら、どうしても抽象的になり、いろいろな事例を出し、具体的に述べられた本書の、説得力みたいなものが伝わらないと思う。これが出版された2010年当時は、著者の提言する解決策に希望は見いだせなかったかもしれない。けれど今はどうなんだろう。311以降の日本を見据えた、宇野氏の著作があれば読んでみたい。2014/11/09
coolflat
26
これまでは先進国(勝ち組)と途上国(負け組)の壁で隔てられており、一国内で平等・不平等はそれほど顕在しなかった(例えば先進国であるなら皆が裕福であるという意識、俗に言う中流意識)。しかしグローバル化により、国民国家は崩れ各国は均質化し、人々世界の人々と自分たちの平等・不平等を意識することになった。また一国内で勝ち組・負け組がはっきりとし、それまで見過ごされてきた平等・不平等が国民一人ひとりの目に見えやすくなった。人々が平等化を求め、対立や紛争が激化する。平等化の時代とは既存の秩序が動揺していく時代である。2021/01/28
たばかる
23
個人主義対する研究を概観しながら新しい民主主義のあり方を模索する。個人化自体は個人の尊厳の獲得が容易でなくなる一方、自己統治ができるようになったなど実存の面では善悪は分かちがたい。ただ社会の中の個人化は人々の分断を招きかねない。さらに政府の私物化やネトウヨに見られるような短期的-自己実存的な狭窄な視野での政治運営・政治参加が行われるだろう。最後にデモクラシーは関わる個人の自己反省・批判を促すという点で有益であるとした再評価もしている。2021/01/19
yumiha
23
もともとは『海うそ』(梨木香歩)読後の虚無感が大きくて、それが何なのか見極めたくて、哲学・社会学そして政治学の本を読み続けてきたように思う。本書は、私つまり個人の置かれている状況の分析とそれをどうデモクラシーに繋げてゆくかちゅうことが述べられていた。分断され断片化している個人、という視点は、私が薄々感じていた現代の状況を納得できるように言い当ててくれて、うなずきながら読んだ。けれども、やはり結論部分は、私を満足させてくれなかった。端的に言えば、漠然とした理想論で、現代に有効なのか?という疑問が残った。2015/10/21
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