- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
古来、日本人は鬼や怨霊といった「もののけ」の存在を信じ、語り継いできた。そして、それらは能や狂言、歌舞伎、舞などの芸能の中で、恰好のモチーフとなった。本書は、そのような舞台に登場する「もののけ」をみることで、日本人の心の深層に広がる闇の世界をよみとく。陰陽道(おんみょうどう)を駆使して平安京の悪霊に立ち向かった陰陽師・安倍晴明(あべのせいめい)。雷神と恐れられつつも、「天神さん」として親しまれ、信仰の対象となった菅原道真(すがわらのみちざね)。酒呑童子(しゅてんどうじ)や茨木童子(いばらきどうじ)などの鬼退治で名を馳せた源氏の郎党・渡辺綱(わたなべのつな)。人間社会と闇の世界との境界にいた彼らは、どのように演じられてきたのか、そして今なお観客を魅了するのはなぜか。ユニークな視点から芸能文化を探究する新時代の語り部が、跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する「もののけ」たちの世界にいざなう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
二笑亭
8
陰陽師=安倍晴明、雷神=菅原道真公、鬼バスター=渡辺綱。闇の日本史の住人たちの概略と、彼らがいかに伝統芸能の中で生きたかを紹介する一冊。著者の洒落っ気に満ちた文が心地よく、内容もわかりやすく頭に入ってくる。福岡の「天神」も大阪の「天満」も道真公由来の地名だと、よくよく考えればわかる筈なのになぜ今まで気づかなかったのか……。2022/12/15
パトラッシュ
8
現代人には想像できないが、日本人は明治になるまで神仏魔霊の実在を疑わなかった。当然ながら能楽や歌舞伎、文楽に浄瑠璃などの伝統芸能は人ならざるものに取材した作品が多いとは漠然と知っていたが詳細は不明だった。そんな闇の伝説を安倍晴明に菅原道真、渡辺綱ら著名な面々を通じて整理し、題名通り鬼や雷神、陰陽師など人と闇をつなぐ者の物語を信心深い先祖がどう語り継いできたかを通して平安以来の日本の心性が醸成されたプロセスを解明する。彼らを文芸の題材にするだけでなく信仰対象ともした日本人は、鬼神までも日本化したのだろうか。2020/05/30
m
6
陰陽師安倍晴明、雷神菅原道真、そして鬼退治渡辺綱の豪華三本立て。国立公文書館で土蜘蛛や酒呑童子を退治する源頼光一行の絵巻を見て以来、詳しく書かれた本を読みたいと思っていた。これは良書。古典芸能から迫るというのがまた面白く、能や歌舞伎も見てみたくなった。陰陽道って身近なところにも多く根づいているんだなぁ。もっとこういった類いの本を読んでみたい。2015/09/23
NyanNyanShinji
2
陰陽師として鬼を使役した安倍晴明。怒りのあまり雷神となった菅原道真。武士として鬼と戦った渡辺綱。闇と繋がりのあるこの3人の主人公について、史実・伝説そして諸芸能を通して描いて行きます。上方芸能の語り部としての著者の博識に舌を巻く一冊でした。2021/07/12
meicedar
2
雷に対する言及は面白かった。