内容説明
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産み育てが自己責任化する社会の潮流のなかで、自己責任化した母性は、母親たち・女性たちにどのように作用し、抑圧としてあらわれてきたのか。それに対して、子どもを育てる母親たちはどう抗ってきたのか。
ケア・フェミニズムにおける母性や母親の捉え方の議論を丁寧に整理し、母親業の実践に政治的な価値を見出しエンパワメントとして用いる対抗のあり方を戦略的母性主義という視座から明らかにする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
27
ケアする者の視点をもった母親たちの政治参加が男性中心の社会を変える可能性を論じた本なのだが、母性というくくりが粗雑すぎて、多くのものを取りこぼしてしまっているような気がする(たとえば主夫やシングルファーザーのようにケアする男性、あるいは母になりたくてもなれなかったり母にならないことを選んだ女性を)。さらに、ケアすべき対象は子どもだけではなく老人や障害者や貧困者や外国人もだろう。性別や年齢を超えたケアの倫理を追求するときに初めて「母性愛」のような妄執的な観念から発展的に解放されるのではなかろうか。2021/12/16
小鈴
21
第1章でケアの倫理の重要性に気づかせてもらいましたが、第2章ではフェミニズム思想における「母性」の扱いの潮流を押さえることができます。端的に言うと、フェミニズムは「母親」の前に「個人としての私」を復権(社会的構造による母親の抑圧を明らかに)して、母親業に埋没させない運動を展開したわけです。しかし、一度「個としての私」の確立したあとは、母親になることは個人の責任として「母親業」が自己責任化し、新たな母性の抑圧化が生まれているのが現状です。2000年代はジェンダー中立的なレトリックで母親に対して自己選択と→2021/04/21
小鈴
19
D論。【ケアの倫理の新書化希望】。とても勉強になりました。ケアの倫理の重要性にきづかせてもらいました。「ケア」というと女性や弱者に関わる概念でその文脈で語られる思想というレベルでしか理解していませんでしたが、リベラリズムが前提としてきた「自立/自律した個人」や「平等」の概念、つまり近代的自我を相対化する概念であることに気づかせてくれました。近代の思想や理念は「自立/自律した個人」を選定に組み立てられているため、ケアの思想はきわめて重要あり、これからの新しい思想には欠かせない概念だと理解しました。2021/04/21
shoko
16
ケア・フェミニズムの観点から母性への抑制の理論を整理した上で、その対抗措置としての母親の政治参加を分析する内容。特に理論パートが刺激的で面白かった!①最近興味が増していたケアの倫理について、そのフェミニズム研究の中の立ち位置が理解できたこと、②ずっとモヤモヤしてた「なぜケアには正当な評価が与えられなかったか」に対して、「カント倫理学に基づく世界観がベースにあり、さらに新自由主義がその構造を強化している」という一つの理論的な回答が提示され、嬉しい。ただ、理論に対して政治参加の実践は難しいということも痛感。2023/05/19
いとう
1
memo 母子健康手帳によるケアの自己マネジメント化 「読ませる」項目と「書き込ませる」項目の変化 p89 →再読へ2021/11/02