内容説明
ひたむきな女たちの愛と生を描く短編集――女の心に棲むひめごと。夫の裏切りを知った妻は、すべてを捨てて、静寂な暮しを手に入れたいと、ひそかに思う。ひたむきに自分らしく生きようとする女心を、その微妙に揺れる心の襞を、確かな目で細緻に捉えて描く表題作。ほかに自伝的作品3編をふくめ、女の愛と生を描く、魅力あふれる傑作短編6編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ここぽぽ
16
短編集。日常の心のやり切れない部分、満たされない部分、空虚な隙間、違和感、秀逸な文章で見事に切り取られていて、読後、居心地が悪い。なかったのに、ポッカリ空いていた穴のよう。2023/11/28
やどかり
16
自伝的小説を含む短編集。「四つ目の犬」が悲しかった。小さな頃のこうした思い出は一生心に残ったりする。後味の悪い終わり方の物語もあったが、表題作はよかった。小さな反抗からの大きな自立。見ていて気持ちよかった。2015/06/01
パルフェ
3
再再読らしい。あまり印象に残ってなかったな😓
バーベナ
3
自伝的作品を含む短編集。今回深く印象に残ったのは、美しく愛らしい妹への屈折した思いから、摂食障害に至る姉:律子を描く『揺籠』。律子が抱き続ける家族との疎外感を、丁寧に追いながらも、淡々とした距離感のある文章で、心が自立できない律子への厳しい視線も感じられるのが凄い。律子への否定的な描写はないだけに、かえって甘ったれて生きてはいけないな。と、ハッとさせられる。2011/10/08
山内正
0
最盛期には働く人を乗せ織物工場の街へ 父の死から三十年この町に来た 従業員慰安会の映写勝山音頭が 遊廊跡に碑がある石塚きい、伊藤りへ 長野から雪道を越え働きに来て結核で死んだ二人の名が 女工達の献立表が残ってる 出勤前に鏡の前で並ぶ女工の顔が 農作業も子守もなく給料貰えて 同じ年の女工と話が出来る 石塚きいの遺骨がまだ残ってると言う 2024/05/08