内容説明
安政3年、坂の町、長崎。「これからの世の中、おなごが通詞になったって、罰(バチ)はあたらねェ」攘夷運動、大政奉還、戊辰戦争……一人、この時代を駆け抜けた女性がいた。男装の通詞、その生涯――安政3年、肥前・長崎。出島で働く父から、英語や仏語を習う10歳のお柳。「うち、お父ちゃんのように通詞になりたかとよ」。女人禁制の職に憧れる幼いお柳の運命は、釜次郎、のちの榎本武揚との出会いによって大きく変わっていく。攘夷運動、大政奉還から戊辰戦争へ。激動の時代に消えた一人の「男装」の通詞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
77
アラミスと呼ばれた女で男装の通詞お柳の壮絶な人生ドラマ。幼い頃に後の榎本武揚と知り合い、攘夷運動、大政奉還、戊辰戦争、函館戦争と続く激動の時代に生き、時代に翻弄されながらも逞しく生きた一人の女性。実在した人物かどうかは分からないが、よくぞ宇江佐真理は書いてくれたと思う。宇江佐真理の作品の中では、異色の作品だが女性の視線で描いた女の一代記としては面白かった。好きな作品の一つです。 2021/02/04
ぶんこ
57
子母澤寛さんの取材手帖からヒントを得て、更に取材を重ねて10年後に日の目をみた小説と知り、著者の熱意を感じました。 フランス語通訳として男装で北海道にわたり、公には存在しない通詞として愛する榎本武揚を支え、彼の娘も産んだお柳。 明治初期、女性は公には活躍できなかったとは。 感慨無量です。 物は考えようで、私にはお柳さんの一生は幸せだったと思えるので、ハッピーエンドな物語でした。2016/01/27
優希
45
面白かったです。男装の女性というのが格好良いではないですか。幼い頃に榎本武揚と知り合ったことが全ての始まりなのですね。人生を大きく変えたのですから、攘夷運動、大政奉還、戊辰戦争へと激動の時代を駆け抜けて消えていったのが何とも言えません。2022/02/19
baba
40
再読。幕末の実在したと思われる、男装したフランス通詞のお柳と折角洋行してこれからと志を立てた時に幕府崩壊の時代を生きた榎本武揚との関わりが語られ、函館戦争で次々に船を座礁させた幕府軍の運のない中での人々の葛藤が伝わる。自分の人生を時代に翻弄されることの厳しさが応える。2017/02/11
Makoto Yamamoto
32
幕末父が通詞だった田所柳は、父が教えてくれる英語・仏語・蘭語を覚え、フランス語の通詞に。榎本家と親交のあった父の関係で榎本釜次郎(武揚)の知己を得る。という話ではあるが、どうも著者の歴史小説はピッタリとハマってこない。蠣崎波響が登場する「夷酋列像」もチョット辛かった。 登場人物が生き生きを描かれていていいのだが、歴史事象の騙り方が合わないのかもしれない。 と言いながらも、一日も経たずに完読してしまうのは作者の力量だと思う。2021/02/12
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