内容説明
日本の権力はなぜあいまいなまま続くのか
シリーズ最長!天皇とはなにか。天皇と武士はなぜ共存したのか。
天皇と武士の起源、両者の関係性の変遷、日本特有の「イエ」という組織原理から、天皇制の謎に迫る。
◎社会学者・大澤真幸と、歴史研究者・本郷和人の対談が実現
◎大澤真幸による、3万字超の書き下ろし論文
武士は力をもってもなお、なぜ天皇を排除することはすることができなかったのか?
天皇に帰属していた権力が脱中心化されたところに着目し、天皇と武士の不思議な関係性を読み解く。
謎を追いかけていったその先に、明智光秀がなぜ織田信長を討ったのか、という日本史最大の謎への答えが現れてくる。
歴史研究、社会学、ラカンの「性化の公式」などを横断する力作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
28
天皇という存在が明治以降つくられた男系男子の強いイメージは不自然で、武士から半分軽んじられながらもその軽んじた権力者ですら天皇に代わろうとはしない、その位に日本社会にとってなぜ天皇は必要なのかという謎を考察しています。折口信夫によれば明治以降のイメージを覆す〈女〉としての天皇こそが本来的な天皇の機能だが、権力を補完する武士との関係では武士の方が女性性を帯びるというように性的に両義性を帯びる機能としての天皇像を、ラカンの性化の公式を使い日本人における人間関係を根底で規定しているものとして提示しています。2021/02/17
Tom
0
折口信夫の古代の大嘗祭についての論を引きながら、天皇は神にとっての嫁であったとする。生物的な性とは別に、天皇は女として即位した。武士は天皇のことを蔑ろにしながらも、天皇を滅ぼさず、時には利用、依存したのはなぜか。ラカンの性化の公式を用いて説明しているが、ラカンさんとは初めましてなのでムズカシカッタ。参考文献も英語だし。よ~く何度も読んでなんとか理解。武士が天皇への態度を曖昧なままにしていたのは具体的な外敵の脅威がなかったから。天皇論であり武士論であり信長論である。本書を踏まえた上での日本人論に期待。2021/03/08