内容説明
米国で急増する「絶望死」。労働者階級を死に追いやる正体とは何か? 全米50州各地で、職を失い貧困にあえぎ生きる望みをなくした人々の実態を、ピュリツァー賞を2度受賞した著者がリポート。格差と分断が進むアメリカの窮状に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ
47
「自由」の象徴である米国を結果論で判じるジャーナリスティック視線の中身。アン・ケースらの著書とどっちを先に読もうか迷った。先進国どころか世界レベルで見ても平均寿命の若年化は凄絶。貧富の差が蝕み続けている、富の分布の遍在、銃はもとより薬、酒類の自由売買がもたらす結果、当然依存、死へ繋がって行く・・そして、暴力と犯罪。戦後、日本はTVを通じ「明るい未来」の先輩としてかの国の背中を追ってきた・クシャミしたら、日本が肺炎になると。オレゴン州ヤムヒルの点を切り取った現状分析がアメリカの普遍となりつつある恐さがある2021/07/18
やどかり
22
日本と違い、転職もしやすく給与も上がっているし、アメリカは起死回生が可能で今も裕福で発展を続けている国だと思っていた。裕福な暮らしができているのはごく一部の層で、白人を含む労働者階級では親から子へと負のスパイラルが続いていることを知った。親から続く薬物やアルコールへの依存、10代での妊娠など複数の要因が絡み抜け出すことが困難な子供たちがたくさんいた。そして愛情深い家族の存在の有無が子供の将来に大きく影響していた。日本も給与はここ20年ほど上がらず、厳しい状況だけれど、まだマシなのだろうかと思えてくる。2022/10/22
くさてる
22
現代アメリカの労働者階級における貧困問題のノンフィクション。原題は「TIGHTROPE(綱渡り)」。まさに、運と偶然、わずかな環境の差で、人は絶望のなかで死んでいくことになる、アメリカのシステム。著者自身が自分の故郷の同級生を取材して書いたエピソードが、読みごたえあります。日本でも貧困問題を語るときによく使用される「自己責任」というワードの空しさ。重い内容ですが、それでも改善していけることは、という方向も示されるので、読後感は悪くありません。おすすめです。2021/06/06
Satoshi
18
アメリカの貧困についてのドキュメンタリー。自助、公助とどこかの政治家が言っていたが、その行き着く先が現代アメリカの貧困かもしれない。草の根の解決はみられるが、どれもがボランティア主体である。一方、連邦政府や州はほとんど対策を取らず、犯罪者を収監するだけ。麻薬と銃が簡単に手に入る環境では人が転落するスピードが早く、鎮痛剤中毒がヘロイン中毒に行き着くなど酷い現実がある。2021/04/04
ブラックジャケット
17
何とも憂鬱な題名。著者は現代のアメリカが抱える難問に、自らの子供時代を重ねた。盤石と思われていた中産階級が、全米で転落に直面した。人々は失業、家庭崩壊、と絶望に打ちのめされた。1970年代、オレゴン州の田舎町の通学バスに乗っていた同級生がどういう運命に至ったのか、実証的に綴っていく。薬物中毒、アルコール依存症、肥満、病気、無謀な運転で四人に一人がこの世を去った。実名が悲しい。さらに全米を取材し、リアルな絶望死をこれでもかというように積み重ねていく。最もハイリターンなのは子供の教育に対する投資だと言う。 2021/10/11