創元SF文庫<br> 旱魃世界

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創元SF文庫
旱魃世界

  • 著者名:J・G・バラード【著】/山田和子【訳】
  • 価格 ¥1,188(本体¥1,080)
  • 東京創元社(2021/03発売)
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  • ISBN:9784488629199

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内容説明

十年ほど前から徴候を見せていた世界的な旱魃は、ここ五カ月のあいだ、各地で急速に文明社会を崩壊させつつあった。マウント・ロイヤル市の住人たちが競うように水を求めて海岸へと殺到する中、医師ランサムはハウスボートの船上で、破滅まで引き延ばされた時間を緩慢と生き続けていた。やがて、妄執に囚われた建築家ローマックスの不穏な企みをきっかけに、彼も海を目指して南下を試みるが……生物を拒絶するように変質する世界をシュルレアリスム絵画のように描き出した、バラード〈破滅三部作〉の一端をなす『燃える世界』の完全版、本邦初訳。/解説=牧眞司

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

70
バラードは久しく忘れていたが、世界が緩慢に破滅していくドラマを云十年ぶりに堪能した。自然の圧倒的な力の前に政治も軍事も科学も無意味になりながら、それでも生にしがみつきあがく人びとの有様は戦争や虐殺が主題の作品よりも胸に迫る。SFというよりスペクタクルのない災害を描く小説だが、希望が失われた時代をどう生きるかを問いかける。ハイテク化と格差拡大が進み民主主義への信頼が失われつつある今の時代、バラードの「SFは外宇宙より内宇宙をめざすべき」との主張を具現化した半世紀以上前の作品が現代的な意味を持って甦ってくる。2021/05/05

塩崎ツトム

17
思索し、土地の記憶(景観・借景)を保持し、見立てることは本来特権階級のたしなみであり、数十万年にわたる石器時代の中、人類は一つの歯車として生きなければならず、その時には花の美しさも語られることはなかっただろう。水が地表が消えた時、人々は神の進行どころか、船や自動車の役目も忘れ、それを記憶していたものこそ一種の狂人であり、その人物はノマドになるしかないのだった。2021/05/20

ふみふみ

15
地球規模の旱魃化が進む中、人々は水を求めて海を目指すが、世界はマッドマックス的サバイバルワールドと化していく。景観の変質っぷりと主人公の思弁を重ね合わせる記述やエキセントリックな登場人物など特徴的な部分はあるけれど、筋立もきちんとしており、発表当時はともかく今の感覚だとかなりオーソドックスな人類終末ものに感じるんじゃないかなあ。同著者の「クラッシュ」は観念的で硬い文体、意味不明のメタファー、内容のグダグダさに辟易しましたが本作は普通に読めますねw。2022/07/09

スターライト

13
この本が出るまで、『燃える世界』を改稿したヴァージョンがあることを知らなかった。いわゆる〈破滅三部作〉と言われる作品の一つで、世界はひどい旱魃に見舞われ、主人公のランサムが住むハミルトンでも水不足が深刻化する。人々が水を求めて内陸から海岸に向かうが、そこでは人々の欲望むき出しの景観(ランドスケープ)が展開されるのだった…。ただ生き延びるための行動が人々の意識や社会の在り方を変えて行き、人間の内面を露わにしていく描写は容赦ない。降り出した雨にも気づかないほど消耗したランサムの姿が痛々しい。2021/07/24

vaudou

11
「失われた時間の瀬に干上がったイメージだけが残る、遠い宇宙の亡霊たち。均質な光と、いっさいの動きの不在に、ランサムは、自分が今、“イナー・ランドスケープ”を進みつづけているのだという感覚を覚えた。そこでは、未来を構成する要素が、静止画のオブジェクトのように、形も関係性もなく、彼を取り囲んでいるだけだった」長編『燃える世界』を大幅に改稿したもので、ほとんど別の作品になっている。ポストアポカリプスの大地で蠢く歪な人々、砂の海に取り残された蒸気船など、バラードらしい退廃の美は至る所に頻出する。ファンは読むべし。2021/03/28

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