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内容説明
菅家利和さんの無実が確実になった足利事件。男性にとって決して他人事ではない痴漢冤罪。これらの悲劇はなぜ起こるのか。「起訴された刑事事件の有罪率――九九%」という驚くべき数字は、本当に妥当なものなのだろうか。実は日本の裁判所には、誤判を必然的に生んでしまうある心理傾向が存在する、と著者は指摘する。元裁判官だからこそ告発しうる冤罪の根源から、日本の司法の「建前」と「現実」の甚だしい乖離が見えてくる。冤罪は、誰もが巻き込まれる可能性がある人災なのだ。また本書は足利事件の判決を改めて検証する。マスコミは誤判の原因について、DNA鑑定の技術的進歩の結果、昔の鑑定の誤りが判明したと報道している。ならば、その鑑定に基づく判決を行わざるを得なかった当時の裁判官に非はないと考える方もいよう。しかし本書は、当時の判決は当時の水準からしても間違いであったことを、論理的に断定する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おぎわら
17
ちょっと古いものだが冤罪に関する問題提起の本。冤罪の原因は、推定無罪を建前と考え、有罪を示唆する不完全な証拠に幻惑されて有罪の方向に向かいがちな裁判官の心理的傾向という。刑事事件の有罪率は99%とのことで、無罪判決には勇気が要る。それは納得。でもそれだけ。著者は理系(分子生物学)出身の元裁判官でDNAには詳しいらしいが、足利事件を扱う前半は重要な点の説明を漏らしていてわかりにくい。文は平易だが冗長。後半の痴漢冤罪の話も一般論で不要。文系裁判官らを小馬鹿にするような上から目線も嫌味。5分の1の分量でよい。2017/12/18
Humbaba
10
誤審をしてしまい,それが明らかになったときは,警察や検察は謝る.しかし,裁判所は謝らない.自分たちは情報に従って正しく判断した.だからこそ謝る必要はない.そのような態度こそが,誤審を作る原因であり,取り除かなければいけない問題である.2012/02/13
アルゴン
3
★★★★ 「原則通りやっていては有罪なんて到底無理」という検察側の主張もわかりますが、やはりこの本が言うように原則無視がはなはだしい。2011/02/28
Gatsby
3
痴漢の冤罪のケースは、本当に恐ろしいと思った。電車には乗れないですよね。でも、現状がおかしいという声を上げる必要を感じた。国家権力を賢くコントロールするという観点は大切。2010/05/18
ラスコリ
2
冤罪判決を言い渡す裁判官を糾弾するものだった。 裁判官は最後の砦、裁判所は被疑者の無実を発見する場所であるという、立派な建前が崩れることは憂慮すべきことだ。最近、痴漢については地裁で無罪が出されるケースが目立つ。 水掛け論による不利は少しずつなくなっているのではないか。 裁判所が絶対正しいという考えはもう止めよう。刑罰を科す機関なのだから慎重に。2015/03/16