ちくま新書<br> 女帝の古代王権史

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ちくま新書
女帝の古代王権史

  • 著者名:義江明子【著者】
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 筑摩書房(2021/03発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480073815

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内容説明

卑弥呼、推古、持統……、古代の女性統治者/女帝はどのような存在だったのか。かつては「中つぎ」に過ぎないと考えられていたが、この四半世紀に研究が大きく進み、皇位継承は女系と男系の双方を含む「双系」的なものだったことがわかった。七世紀まで、天皇には女系の要素も組み込まれていたのだ。古代王権史の流れを一望し、日本人の女帝像、ひいては男系の万世一系という天皇像を完全に書き換える、第一人者による決定版。

目次

序章 古代双系社会の中で女帝を考える
女帝は例外か普遍か
双系社会と長老原理
見のがされてきた史実
Ⅰ 選ばれる王たち
第一章 卑弥呼から倭五王へ
1 卑弥呼と男女首長
卑弥呼「共立」
「会同」に集う男女
卑弥呼の墓とヤマト王権
〝一夫多妻〟と男女の首長
2 倭五王と将軍号
倭五王の系譜関係
冊封記事の「世子」
「倭」姓の意味
将軍号と府官
甲冑を副葬する男性首長
3 伝承のイヒトヨ
飯豊王の執政
鳥獣名の男女首長
伏流する女性首長
卑弥呼とワカタケル
第二章 世襲王権の成立
1 婚姻と血統の重視
継体の即位
欽明とその子たち
濃密な近親婚の意味
2 世代原理と即位年齢
熟年男女の即位
長老の統率する社会
群臣が〝えらぶ〟王
3 キサキと大兄
大王とキサキの別居慣行
「娶いて生む子」の系譜
男女の「王」
同母子単位の「大兄」とキサキ
Ⅱ 王権の自律化をめざして
第三章 推古──王族長老女性の即位
1 群臣の推戴を受けて
異母兄敏達との婚姻
継承争いを主導
崇峻の失政から額田部即位へ
欽明孫世代の御子たち
子女婚姻策の狙いと挫折
2 仏法興隆と遣隋使派遣
「三宝興隆」詔と馬子・厩戸
讃え名「カシキヤヒメ」
『隋書』にみる倭国の王権構造
小墾田宮の外交儀礼
3 蘇我系王統のゆくえ
「檜隈大陵」への堅塩改葬
「檜隈大陵」と「檜隈陵」
厩戸の死と二つのモニュメント
遺詔をめぐる群臣会議
二つの推古陵の意味
第四章 皇極=斉明──「皇祖」観の形成
1 初の譲位
遣唐使派遣と百済大宮・大寺造営
皇極の即位と上宮王家滅亡
乙巳の変と同母弟軽への譲位
姉弟の〝共治〟から破綻へ
2 飛鳥の儀礼空間
重層する飛鳥宮
儀礼空間の創造
母斉明の追福と継承
世代内継承からの転換
3 双系的な「皇祖」観
八角墳の始まり
「皇祖」観の形成
「先皇」斉明の位置
第五章 持統──律令国家の君主へ
1 「皇后」の成立
氏組織の再編
吉野盟約と御子の序列
草壁立太子への疑問
 野「皇后」と草壁「皇太子」
「天皇」号と「皇后」「皇太子」「皇子」
2 即位儀の転換
天武の死と持統称制
即位儀の画期性
藤原京の造営
3 譲位制の確立と太上天皇
吉野行幸と高市の処遇
高市の死と軽への譲位
太上天皇の〝共治〟
大宝令制定と遣唐使再開
不比等の登場と役割
付 古代東アジアの女性統治者
新羅の善徳王・真徳王
則天皇帝の統治と評価
女主忌避言説の増幅
Ⅲ 父系社会への傾斜
第六章 元明・元正──天皇と太上天皇の〝共治〟
1 「太上天皇」「女帝の子」「皇太妃」
譲位と即位宣命
「太上天皇」の身位と権能
大宝令の「女帝の子」規定
「皇太妃」阿閇と草壁称揚
2 元明による文武・元正の後見
皇太妃の後見
血統的継承観の浮上
元正への譲位
元明・元正と橘三千代
3 聖武と元正太上天皇
聖武即位と長屋王の変
〝共治〟のはらむ拮抗と緊張
太上天皇の居処
第七章 孝謙=称徳──古代最後の女帝
1 女性皇太子の即位
皇太子制の成立と展開
女性の「皇太子」
太上天皇・皇太后・天皇
2 聖武遺詔の重み
廃太子から大炊立太子へ
群臣による他王擁立の企て
淳仁即位から廃帝まで
3 道鏡擁立構想とその破綻
重祚と皇太子不在
「法王」道鏡との共同統治
熟年男性官人の即位
皇緒観念の確立
終章 国母と摂関の時代へ向けて
後宮の成立と皇后・キサキの変容
太上天皇制の再編
母后と摂政
王権中枢における女性の位相の変化
あとがき
引用参考文献
図表一覧

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

やいっち

90
本書の内容は、「卑弥呼、推古、持統…、古代の女性統治者/女帝はどのような存在だったのか。かつては「中つぎ」に過ぎないと考えられていたが、この四半世紀に研究が大きく進み、皇位継承は女系と男系の双方を含む「双系」的にものだったことがわかった。七世紀まで、天皇には女系の要素も組み込まれていたのだ。古代王権史の流れを一望し、日本人の女帝像、ひいては男系の万世一系という天皇像を完全に書き換える、第一人者による決定版」に尽きる。2022/04/29

南北

51
推古天皇から称徳天皇までの女帝は男帝が即位するまでの「中継ぎ」とされてきた見解を批判した本です。女帝にも政治的な実力がある場合が多く、譲位後も政治的な関与を行ってきた場合があるとする見解は興味深く感じました。こうした点を双系社会という用語で捉えようとしていますが、いくつか疑問点が残りました。例えば母方の祖母の父が天皇の場合「女系」としていますが、母方をたどって女性天皇に行きつく場合が女系ですので、違和感が残りました。2021/09/24

nagoyan

20
優。日本(倭)の古代王権は父系母系の双系社会であり、また、統治者として求められる資質は長老であったとする。ここから、文献を当時の政治情勢に照らして虚心坦懐に読み解くことにより、後代(特に近代)に成立した視点から自由に女帝の姿を捉える。それは、「中継ぎ」などではなく、まさに統治する王者としての女帝の姿である。武則天や善徳・真徳など東アジア全体にも目を配り、推古、皇極=斉明、持統、元明・元正、孝謙=称徳、という女帝の流れが、形を変えて藤原明子皇太后の後宮支配を通じて摂関政治へと結びついていく流れを骨太に描く。2021/03/17

さとうしん

17
『つくられた卑弥呼』の続考。推古~孝謙・聖徳を中心に、古代の女帝が男系継承を前提とした中継ぎというような軽い存在ではなかったこと、古代の皇位継承が族内婚を前提とした男女双系的なものであり、長老女性と年少男性による共治がパターン化しつつあったこと、草壁が皇太子であったというのは後付け的な理解であることなどを論じ、天皇位について男系継承とは別の伝統があり得たことを示している。2021/03/10

(k・o・n)b

12
男性史観・皇国史観の影響から今の天皇制が変わらず太古から続いてきたと考えてしまい女帝の存在もその流れの中で評価されがちだが、そんな凝り固まった思考をほぐしてくれる感じが読んでいて痺れた。これぞ読書の醍醐味だなー。群臣による共立という側面が強かった時代は同年代の実力者であれば男女を問わず擁立され推古の即位に繋がった。斉明=皇極の時代からは世襲の要素が濃くなり、高齢女性が若い男性を補佐するパターンが続いた。女帝の即位や重祚という例がなぜ古代のこの時期に集中したのか、王権の成立過程と併せて考えると納得感がある。2021/10/06

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