内容説明
五月下旬の札幌。生活安全課の小島百合は、以前ストーカー犯罪から守った村瀬香里と共にピアノのミニ・コンサートに行くことになった。ひと足先に、会場であるワイン・バーについた小島は、そこで人質立てこもり事件に遭遇する。犯人は強姦殺人の冤罪で四年間服役していた中島喜美夫。コンサートの主役は、中島が逮捕された当時の富山県警本部長の娘だったのだ。これは単なる謝罪要求なのか――。圧倒的な緊迫感で描く、道警シリーズ第六弾!(解説・吉野仁)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
SJW
159
道警シリーズ第6弾。札幌藻岩山にあるワインバーで行われるピアノコンサートの参加者が人質に取られるが、その人質に佐伯たちの仲間である小島も含まれていた。事件発生から犯人の占拠、警察側の人質事件の準備・対応・交渉、人質側の心理、犯人側の心理などテレビドラマでは分からない部分まで描写され、臨場感たっぷりの人質事件の始終を体感した。権力者の違法行為を暴く小気味良い展開もこのシリーズの魅力。お約束のエンディングはもう少し余韻に浸りたかった。2017/10/23
サム・ミイラ
116
それなりにどんでん返しもあるし面白いには面白かったけどスケールは縮小したような気がします。警官の紋章や巡査の休日で取り入れられたエド・マクベイン方式なら今回はサイドストーリー程度の傍流の話がメインだったのでこんなものでしょうけど。最後まで今一つ盛り上がらず淡々と解決してしまいます。そろそろこのシリーズも終わりに近づいてるような予感。一方で百合と佐伯の関係だけは進展しているような(笑)2014/07/29
抹茶モナカ
100
北海道警察シリーズの第6作。人質立て籠り事件を描く。スマホ、ツイッター、SNSが道具として出て来て、現代的。サクサク読めて、気分転換には良いかな。佐伯達の行き付けのバーに流れるジャズについて、詳しく書いてくれないのが、残念。2014/11/09
めぐ
62
道警シリーズ第6弾。面白かった。途中で引っかかることもなくサクサク読めた。ピアノのミニコンサートが予定されていたワイン・バーで人質立てこもり事件が起きる話。捜査員が走り回ったり銃撃戦がある訳ではないが、犯人や人質や強請られている側の、個性の違いや心理の変化が面白かった。犯人のちょっとした声の調子や行動に対して、人質が緊張したり弛緩したりする様がまるでその場で見ているかのように伝わって来る。ストックホルム症候群に陥りそうな人や人質同士の緊張感の中での軋轢など、小島の視線で淡々と観察されるのが面白かった。2017/09/07
タツ フカガワ
51
道警シリーズ6作目。国会議員の楠本へある情報をネタに3億円を要求する手紙が届く。同じころ、身内のピアノ・コンサートを開く予定の札幌のワインバーへ2人の男が乱入する。たまたまそこに客として小島百合巡査部長がいた。武器は持たず、脅迫もしない慇懃巧妙な監禁から生まれる密室の心理劇が面白かった。ただ事件解決へ向かう終盤のバタバタ感がちょっと残念。お馴染みエピローグのブラックバード店内で今回流れるのはジェリー・マリガンかしらん。2021/04/13