内容説明
グローバルな正義への関心が急速に高まってきた。法哲学・政治哲学・経済学の第一線の論者が、欧米の最先端の研究をふまえて、地球規模の正義を多角的に考察。グローバルな生存権・ネットワーク・社会契約・義務の理論的考察から、移民・国際貿易・食料・多国籍企業の分析と提言までをカバーする。
目次
はしがき
I 原理と構想
第1章 グローバルな生存権論[宇佐美誠]
1 主題の設定
2 誰がなぜ生存権をもつか
3 生存権とはいかなる権利か
4 誰がいかなる義務を負うか
5 義務はどのように果たされるか
6 批判への応答
7 結論
[Comment]ナショナルな絆の理論的位置づけを[施光恒]
第2章 グローバルな〈シンボリック・ネットワーク〉[長谷川晃]
1 はじめに
2 正義の構成条件
3 〈シンボリック・ネットワーク〉とその構造
4 〈シンボリック・ネットワーク〉の機能
5 〈シンボリック・ネットワーク〉と正義の正当化
6 おわりに
[Comment]「多様性の要請」と「統合の要請」をいかに両立させうるか[施光恒]
第3章 社会契約モデルの拡張──ロールズからセンへ[後藤玲子]
1 はじめに
2 功利主義的社会厚生モデルとそれに対するロールズの批判
3 ロールズ原初状態モデルの拡張
4 潜在能力指標を用いることの意味
5 ルール制定主体の範囲と情報
6 社会ルールの主体としての個々人に関する非対称的扱い
7 センのグローバル正義構想
8 複数の集団にまたがる個人の自己統合化
9 結びに代えて
[Comment]より現実的なグローバル正義論へ[松元雅和]
第4章 正義の宇宙主義から見た地球の正義[瀧川裕英]
1 正義の射程
2 非関係主義
3 正義の自然義務と消極的義務
4 正義の義務と人道の義務
[Comment]関係主義/非関係主義概念による整序[施光恒]
II 制度と実践
第5章 移民の規制は正当化できるか?[森村進]
1 序
2 自由権
3 民主主義
4 社会の一体性
5 経済的豊かさ
6 配分的正義,とくに平等
7 エコロジー
8 パターナリズム
9 結語
[Comment]自国民/外国人の二重基準を掘り崩す[松元雅和]
第6章 グローバル不正義としての南北間搾取[吉原直毅]
1 問題の所在
2 搾取の概念的定義をめぐる論争
3 拡張されたヘクシャー=オリーン型国際経済環境
4 自由貿易均衡における南北間搾取関係の原理的生成
5 結論
[Comment]搾取理論に基づくグローバル正義観の刷新[松元雅和]
第7章 「食」とグローバルな正義[伊藤恭彦]
1 はじめに
2 グローバル・フードシステム
3 グローバル・フードシステムと正義
4 おわりに──グローバルな正義と食料主権
[Comment]ゼロサムゲームを越えて[桜井徹]
第8章 多国籍企業の政治的責任[神島裕子]
1 はじめに
2 導きの糸としてのロールズの社会的協働論
3 政治的に分断された世界の正義論──フリーマンとミラー
4 多国籍企業の政治的責任
5 おわりに
[Comment]社会契約説とグローバル正義論[桜井徹]
人名索引
事項索引
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すずき