内容説明
伝統的な哲学は、正義の理論や共通善の説明を作り上げ、それが多くの政策課題についてもつ含意を示すというやり方で、政策の問いを考えてきた。しかし本書は、現実世界で直面する政策課題から出発し、哲学だけでなく、歴史学、社会学、科学的証拠を使い、なぜいまそれが問題になっているのかを解明し理解することを目指す。
目次
日本語版への序文
謝辞
序論
第一章 動物実験
第二章 ギャンブル
第三章 ドラッグ
第四章 安全性
第五章 犯罪と刑罰
第六章 健康
第七章 障碍
第八章 自由市場
第九章 結論
文献案内
訳者解説
参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
55
倫理・道徳、そして哲学の観点で、物議を醸す話題を検証。功罪。自由に伴う義務と責任。物欲・金欲など、人の欲する多様な刺激への葛藤、矛盾という感。両極から導く落とし所。私の哲学である「Should not always be fair but Reasonable」に繋がる。著者の結論への賛同ではなく、読書1人1人が考えることが、本著の齎す価値ではなかろうか。政策は妥協の産物?YES/NO。凹凸はあれど、生きる知恵と解釈すべきかもしれない。 但し、自分のスタンスは持つべし!かな。2017/08/08
ケニオミ
12
邦題が誤解を招いていますね。英題は「倫理と公共政策」。哲学のクラスの副読本のようなお堅いタイトルです。内容もとっつきにくかったです。ただ、本書の目標ははっきりしており、「最善の社会の姿」は求めず、「現時点から辿り着ける最善の社会の姿」を掲げています。次善の社会を実現するために著者がすることを勧めているのは、①現状の把握、②現在の規制と、変革に必要になりそうなものの理解、③現在の規制とその規制の歴史的背景の理解、④人々が何に合意していないかの理解です。これらの把握や理解だけで一生が終わってしまいそうです。2017/02/07
海星梨
8
「この理論に沿って、政治を変えるべきだ」ではなく「今はこうで、その背景にはこういうのがあるかもしれない。だから、こうしたほうがいいものになるんじゃないか?」という形で哲学は政治に貢献できるという趣旨の本。結構難解で、5時間級です。疲れているので頭に入ってこなかったが……。前に読んだ哲学者(倫理学だったか?)の安楽死への批判本を思い出した。善悪の話をすれば「死」の属性がある安楽死は悪だけど、家庭の経済資源の分配と見たときに、「回復が見込めない医療と将来のある学生の進学どちらか?」でもあるんだよね。2023/11/13
DEE
5
哲学って難しいというのが、自分の正直な感想。 中学生の頃に「卵が先か、鶏が先かを考えるのが哲学」と言われた覚えがあるけど、全然違うじゃないか。 相容れない二つの意見。 そのトゲトゲした接点を「緩和する」のが政治哲学。 善悪や白黒だけで判断できるもんだいなんて殆どないから、そのために両者の溝を論理的かつ合理的に埋めるのが哲学というのを読んで、すごく納得できた。 本の内容は自分には難しかったけど…2017/04/16
inu
3
政治哲学者、現実の公共政策に挑む、って感じの本。哲学理論を適用して現実の問題を解決しようとするトップダウン的アプローチではなく、現実の意見の対立から始めるボトムアップ的アプローチを用いて政策を検討する。 個々の論点においては、面白く勉強になることを言っていると思うが、全体的に言いっぱなしになってる気がする。現実に妥協的すぎではと思うこともしばしば。 あと訳文は第1章が妙に読みにくいので他の章から読んだ方が良いかもしれない。というか最終章のまとめから読んだ方が良いかも。2021/07/25