内容説明
心の居場所を探す少年の伝承と再生の物語。
親友が事故で亡くなったのは自分のせい、と自らを責め、心を閉ざしてしまった中学2年の杉本潤。母と一緒に、東京から逃げるように母の故郷の愛知県奥三河・澄川へと引っ越す。そこはコンビニもファストフードの店もないど田舎だが、700年の歴史を持つ「花祭り」という神事、伝統芸能が根付く山深い地域だった。
奥三河にある10を超す集落が各々に伝わる「花祭り」を大切に守っているが、どこも少子化と過疎化の問題は深刻。潤の新たなクラスメイトもたったの3人で、潤の転入によって久しぶりに集落の中学生だけで少年の舞である「三つ舞」ができると皆が期待する。しかし、人との関わりを極力避けたい潤には煩わしさしかない。
“親友を失った自分が、「神」に捧げる神楽だなんて――”。
祭りへの参加を拒否する潤。だが次第に、周囲の人々の心にも巣食う悩みや悲しみ、この世の不条理さを知るようになる。
守るべき伝統と、受け入れざるを得ない変化。少年の心の成長と、「今」を懸命に生きる人々を描く、美しくて愛おしい再生の物語。
解説は中江有里。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Walhalla
34
心に深い傷を負った少年が、『花祭り』という伝統的な神事を経験することによって、新たに生きる力を得る物語でした。『生まれ清まり』を祈願するこのお祭りは、奥三河地方で700年以上の歴史があるそうで、その伝承を支えてきた地域の人々の信仰心と、巨大な時間のエネルギーに導かれるように成長してゆく姿が美しいですね。過疎地ゆえに数人しかいない同級生ですが、みな悩みを抱えながらも、それぞれの道を見つけようと前に進む様子が良かったです。2022/08/30
香翠
24
読み終えたばかりだけどドキドキしている。伝統芸能を守り、引き継ぐことの意味合いの深さのようなものがズーンと投げかけられたようで、静かに興奮状態。2021/06/12
タルシル📖ヨムノスキー
22
親友が事故で亡くなったのは自分のせいだと心を閉ざしてしまった中学2年の潤は母親の田舎へ移り住む。そこでは700年以上の歴史を誇る「花祭り」という神事が行われていた。なかなか周囲と打ち解けることがなかった潤だったが、花祭りに関わることで心に傷を抱えるのは自分だけではないことを知る。最後の夜通し行われる神楽は是非映像で、いや実際に観てみたい。「伝統文化は大切」とか思いながら自分はその伝統文化を守るために何かしているかというとそんなことはなく、ましてや地元の伝統文化について、何も知らないという恥ずかしい有り様。2021/05/03
qoop
5
自分の行いを許せずに己を責め続ける少年。移り住んだ土地に伝わる神事に舞手として参加することで広い視野を得ていく様子を、本作は抒情的に書いていく。閉塞的な環境を受け入れていく/脱しようとする同級生たちもまた、神事に関わりながら自身の思いを強くして行く。型や手順がガチガチに決まった伝統をトレースすることで、個人の悩みがデトックスされて先に進む気力が得られるということは大いにあり得る。そういう意味でのリアルさが作品を支えている。2024/06/03
みやち🐹
5
伝統芸能の話は好きなので楽しんで読めました。田舎のよさも悪さも書いてある気がします。他所者は目立つし話題に上がるんですよね。「本当に全部伝わる」ので、周も潤もクラスメイトや周りの人に恵まれて良かったなと思います。転校してきて舞を覚えて踊る⁉と運動音痴な私は拒否一択な状況を、よく潤は受け入れたなと感心しました。舞や歌、祝詞など祭りの様子が詳しく書かれていてその場にいるような心地になりました。お祭りに行きたくなります。「花祭り」には鬼が多く登場するのが意外でした。エピローグでその後が知れて良かったです。2022/02/17
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