内容説明
80年代 東京――僕と不良のひと夏の物語。
中学卒業と同時に渡米し、長らく日本を留守にしていた吉田倫。吉田は旧友である寿司屋の主からの誘いに応じて、中学の同窓会に赴いた。
同窓会のメインイベントは当時作ったタイムカプセルを皆で開けること。タイムカプセルの中に入っていたのは、アイドルのブロマイドに『明星』や『平凡』といった芸能雑誌、『なめ猫』の缶ペンケースなどなど。三十年以上前に流行した懐かしいグッズの数々に、同級生たちの会話が盛り上がる。
そんな中、吉田の紙袋から出てきたのは『ビニ本』に『警棒』、そして小さく折りたたまれた『おみくじ』だった。
それらは吉田が中学三年の夏休みに出会った、中学生ながら屋台を営む町一番の不良、東屋との思い出の品で――。
平凡な「僕」と不良の「あいつ」、正反対の二人が出会った、ひと夏の切ない物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
111
この作者の「銀座「四宝堂」文具店」を読んで印象がよかったので、最初の作品というこの本を手に取ってみました。私にとっては懐かしいことばかりでした。やはり中学・高校時代にはこの小説の舞台である新井薬師の駅近くに住んでいたのですぐ本に没頭しました(作者もこの近くの出身なのですかね)。中野駅近くや新井薬師の縁日など今でも印象に残っています。この小説では主人公と不良でテキ屋の同年代の人物との出会いが描かれています。イメージとしてはやや甘いかなあと思うのですが読んでいて楽しめました。2023/04/06
おしゃべりメガネ
94
先日、初めて読んだ作品が作風的に良かったのでこちらを。作者さん、人と人との温かい繋がりを書かせたらホント、うまいなぁと。主人公は中学生二人で、一人は柔道と英語が得意な「吉田」とテキ屋の息子で読書が好きなちょっと変わった不良「東屋」。そんな二人の短い期間ながら、胸にじんわりときて懐かしくもなる青春ストーリーが綴られています。ただ、ちょっと違和感が残ったのが不良キャラの「東屋」が中3の設定なのに、全然中学生らしくなかったトコですね。高校生くらいの設定ならすんなり受け入れたのですが、中3だとちょっと無理かな。2025/02/15
fwhd8325
53
小学館おいしい小説文庫です。中学生よりも少し上の世代に感じましたが、それはそれでいいでしょう。私の時代には妙に大人びた同級生がいました。主人公の友人東屋くんは中学生でありながらテキ屋です。なかなか面白い設定です。そして、この友情物語、任侠もののようで心に残ります。2021/07/25
たるき( ´ ▽ ` )ノ
40
Kindle Unlimitedにて。表紙に惹かれて読んでみた。この時代、本当にこんな感じだったの?東屋くん、中学生とは思えない!彼の作った焼きそばは食べてみたくなった。2023/09/21
煮豆
35
テッパンで焼かれている焼きそばが美味しそうな表紙に惹かれて購入したのに、積んでいてやっと読む。「日本おいしい小説大賞」第一回の応募作とのこと。中学の同窓会で30年以上経過したタイムカプセルを開ける。それで思い出すのは中学3年の夏期講習で出会った地元で有名な不良の東屋との出来事。美味しそうな描写もあるが不良話が主題。東屋の自宅での描写は懐かしさがあってよかったが「くいしん本」とは別物の不良小説でしっくりこなかった。あらすじの「涙が止まらない」とは全くならずに残念。文字が大きめなので読みやすかった。2022/12/26