虚学のすすめ - 基礎学の言い分

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虚学のすすめ - 基礎学の言い分

  • 著者名:白石良夫
  • 価格 ¥2,090(本体¥1,900)
  • 文学通信(2021/02発売)
  • ポイント 19pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784909658494

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内容説明

学問は即効薬ではない。即効薬ではないが、それなくして即効薬はつくれない。
学問が役に立つとはどういうことか。学者のあり方とは。研究のおもしろさとは何か。元国語科教科書調査官の著者がつづったエッセイ集。「第1部 むなしい学問なのか」「第2部 文学青年から文学研究者へ」「第3部 国文学ひとりごと」でつたえる、学問のススメ。

【学問には、その成果が見えるようになるまでに長い時間を要する分野がある。そのような長い時間がたつと、成果が見えるようになっても、社会と学問との接点はどうしても見えづらい。当の研究者でさえ、往々にしてその接点を捜しあぐねている。しかし、繰り返して言うが、学問は即効薬ではない。即効薬ではないが、それなくして即効薬はつくれない。
成果結果のあらわれるまでに長い時間を要し、社会との接点が理解されにくい学問、それが「虚学」であり、文学部はその「虚学」の巣窟である。】...本書「虚学の論理」より

目次

まえがき

第1部 むなしい学問なのか

虚学の論理

文学部の光景/滅びるか、インド哲学/不変の社会的評価/約束されない「虚学」の未来/学問は即効薬ではない/本当に虚しい学問か/蓄積こそが学問である/開かれた大学とは何か/それから二十年以上を経て

ノーベル賞と旧石器

だれも気づかない共通点/文系・理系を問わない問題/専門家の悲痛な声/学者でない人間に学者の良心を責めてどうするんだ/石器捏造と基礎学軽視、どっちの罪が重い?/雨後の筍が日本を救うか/それから二十年

「勇気をもて。学者の良心を忘れたのか」

霧の撤収作戦/「学者の言うことを信じよう」/武人の激励/「学者の良心を忘れたのか」

共和国は学者を必要としていない

レーニンを永久保存した男/ロシア革命の場合/フランス革命の場合/文化大革命の場合/そして、日本の大学改革の場合

人文学のプリンシプルを忘れるな

研究者は強迫観念を持て/論文集出版の意味/新書本では業績にならないか/グロータース神父の挑発/人文学の戦略/人文学には人文学のフォーマットがあるはず

大学図書館は本を貸し出すな

図書館は貸本屋ではない/貸出件数という亡霊/手をのばせばそこに本がある/地方国立大学の附属図書館をめぐる惨状/先人の遺産が泣いている/いまこそハコモノ行政の出番/知のリージョナルセンターが聞いてあきれる/学生サービスを放棄した大学

第2部 文学青年から文学研究者へ

文学部への道

大学は解体されなかった/国立二期校の風景/文学・歴史のほうに進め/見えなかった文学部という選択肢/遅すぎる反抗期

文芸部部室と無邪気な夢

バスから見た六本松キャンパス/文芸部入部/ファントム墜落と政治の季節/小説の季節のなかで/季節の移ろい/作家への憧れ/停止した時間/「春が来て夏が来て秋が来て」/慌ただしい六本松との別れ/「カインとアベルの息子たち」/だれもいない文芸部部室/彷徨のなかで/文学青年との訣別/跋

中野三敏先生と和本修業

和本との邂逅/靴下の片一方を捜して/おさらば文学青年

今井源衛先生と『学海日録』刊行始末

学海遺著・旧蔵書の行方/妾宅日記の発見/本宅日記とその研究会/文学史登場以前の依田学海/附 新潮文庫収録にあたって

非の打ち所のない先行研究の功罪

厳密な分類の索引は必要か/学際の境界は厳密であるべし/蔵書目録は大雑把であれ/「帝国図書館蔵書目録」の使い勝手/『新編帝国図書館和古書目録』余談/大雑把な先行研究に導かれて/「先行研究」にまつわる誤解

第3部 国文学ひとりごと

作者は本当のことを書かない

国語教科書の注釈/当たり前の事実に注釈は必要か/作者は?をつかないという幻想/韃靼海峡を渡ったてふてふ

二人のタケウチ氏をめぐる因縁譚

四国の厳しい一読者/二人のタケウチ氏/奇しき縁

資料を読み解く面白さ

江戸藩邸とは/歴史資料としての手紙と日記/日記はことの詳細を記述しない/印旛沼開発一件の駆け引き/維新後に伏せられた事実/戊辰戦争と佐倉藩の一挿話/新たな発見をして

語る〈時間〉、語られる〈時間〉

ほか

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

さとまる

4
選択と集中とか稼げる大学とか目先の収益しか考えていない文科省の政策に対するアンチテーゼ的なものを期待して読んだのだが、そういった内容は第一部だけで、第二部は自分語りに第三部は著者のエッセイのようなものの集録で肩すかしを食らってしまった。特に図書館に関する提言には時代錯誤な上から目線しか感じられない。2023/05/06

明るいくよくよ人

1
もっと虚学を勧めるのかと期待したが、あまりススメてはないのが、ちと残念2024/09/11

me23

1
▼題名見てから読みたくてしょうがなかった。虚学と聞くとゾクゾクする。私自身、「文学部行って何になるんだ」と言われた。「即効薬でないがなくてはならないもの」か。なるほどなぁ。 ▼既知時代(現在)からテクストを読むのではなく、未知時代(作者と同時代)の視点から読め、とは私も学生時代、近世の演習で徹底して厳しく指導された。本書第Ⅲ部のエッセイは、ページをめくってもめくっても既視感があった。学生時代せっせとやってたのはコレだったのかぁと思った。筆者は九大卒とのこと、その近世の先生も九大だった。納得。2021/05/30

まっつー

1
文学研究者としては異色の経歴を持つ筆者が、往時を回想する形をとりながらも、文学部で扱われる学問がどのように有用かを説く一冊。「学問は即効薬ではない。即効薬ではないが、それなくして即効薬はつくれない。」という帯のキャッチコピーに、すべてが凝縮されている。文学部は栄えるということはなく、各学問とも、命脈を保つので精一杯という印象。その流れに歯止めをかけ、逆流させなければ、人はついに過去から学ぶことができなくなってしまう。そんな危機感を覚えつつ、今後の研究のモチベーションとなった一冊。2021/02/12

Ksbutm

0
タイトルの通りの内容は第一部くらいだな~と思ったらこれエッセイ集だったのか……(読み終わったあとに調べて知った) 文章は読みやすかった2025/05/11

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