内容説明
天正十年(一五八二)、武田が滅び、信長は本能寺で倒れ、それに代わった光秀が討たれ、天下は秀吉の手中へと動き出す――。桶狭間の戦い(一五六〇)から天目山の戦い、利休の死(九一)まで戦国乱世の三十年を十一篇の短篇で描く。出来事の年代順に編集した文庫オリジナル小説集。 〈解説〉末國善己
【目次】
桶狭間/篝火/平蜘蛛の釜/信康自刃/天正十年元旦/天目山の雲/信松尼記/森蘭丸/幽鬼/佐治与九郎覚書/利休の死
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
186
表題作は、秀吉と利休の間にわだかまっていた対立感情を利休の回想を通して描いている。庭の満開の朝顔を見に来た秀吉を茶室の一輪だけで迎えた利休を、秀吉は褒めた。が、利休はそれを俗物への刃として突きつけたのであり、秀吉もそれを察していた。絶対に譲れない価値観を人はどうすればよいのか? 死の間際に自らの業を静かに見つめる利休の心境を、解説では美しいというが、対立を避ける生き方はなかったのか? ほか、武田氏の滅亡を描いた数篇中「天目山の雲」「信松尼記」が印象に残った。戦国に生きる人々から様々な教訓が得られ、有難い。2024/08/10
とん大西
120
滅びや終焉の哀愁を淡々と描く戦国短編集。それぞれ30頁ほどながらも濃厚な11話。表題作「利休の死」は秀吉との出会いを回想しながら最後の日を眺望する渋さ。もはや無念も何もない。漣すらたつことのない利休の境地にリアリティを感じる。お気に入りは、全く地味だが「佐治与九郎覚書」。浅野三姉妹の小督(お江)の最初の夫・佐治与九郎の流転。権力者により小督と婚姻し、引き離された悲哀。政略により再嫁を重ねる彼女もいつしか将軍の正室かつ生母という遠い存在に。仲睦まじかった二人、別離後の人生。与九郎の哀切が沁みてきます。2021/02/20
タツ フカガワ
51
織田信長を中心に、彼とゆかりのある人たちがいかに乱世を生きたかを描く11編の短編はいずれも1950年代の作品ですが、とても濃密な物語世界に引き込まれました。表題作は切腹の原因が諸説ある利休が、自裁前に十数年に及ぶ秀吉との関わりを思い返すもので、二人の間にあった静かなる敵意がじつに怖い。自裁といえば、家康の嫡男信康が自裁に至る「信康自刃」の、信康・徳姫・築山殿の人間関係も怖い一編でした。2023/01/30
ソーダポップ
46
十一篇の短編を年代順に、戦国乱世の三十年を描いたオリジナルの小説集です。織田信長の少年時代から千利休が切腹するまでをたどっています。そして、戦国武将だけではなく、乱世に人生を翻弄されながらも力強く生きた女性を描いた作品も収録されていて、その意味で歴史小説のエッセンスが詰まっており、最初の短編から読むと歴史の流れが追えるようになっています。歴史小説が少々苦手な方でもすんなり物語の世界に入っていける、素晴らしく構成のとれた著書でした。2021/06/26
しーふぉ
21
反権力であり心理描写が秀逸です。2022/07/18
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