内容説明
その朝、最高の幸せと最悪の不幸が少女を見舞った。枕元にあったのは、期待もしていなかった初めてのクリスマスプレゼント。だが信じがたい事件も起きていた。別の部屋で母が殺されていたのだ。家にはすべて内鍵が掛けられ、外から入れるとしたらサンタくらいだった。周辺で頻発していた怪現象と二重三重の謎。京都を舞台に、若き御手洗潔が解き明かす意外な真相と人間ドラマ。心温まる名編。(解説・青柳碧人)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
138
TVでもおなじみ鳥居が両脇の建物の壁を突き破って突き刺さっている京都の錦天満宮が舞台。そして事件は献身の物語でもある。島田版『容疑者xの献身』とでも云おうか。私にしては珍しく密室殺人の真相と奇妙な大型振り子時計の謎についても解った。後者については実は自分も悩まされた現象だったこともある。しかしなんとも身悶えしてしまう事件である。時代を御手洗潔の若き日にしたことで、今の常識とでは眉を顰めるような違和感が横行していた昭和という時代性が色濃く出ている。島田氏が綴る市井の昭和年代史ともいうべき作品だった。2022/02/17
ゆきらぱ
43
あー面白かった すみずみまで読んでしまったし、トリックも挿絵が欲しいとも思わず理解しました。なにせ島田荘司先生には本格部分の頭脳を司られてるので普段と違って理解度が速いのです。先生の密室系は寂しいのがもうひとつありましたね。「Pの密室」を思い出してしまった。あとクリスマスの季節の寂しい話も他にありましたよね。何だったか・・確か御馳走を食べに行ってそこで御手洗が悲しく謎を解く話が・・いや里美ちゃんシリーズだったかなーー2021/03/04
かめりあうさぎ
30
御手洗潔シリーズ。御手洗が学生時代の事件。10年前の不可能犯罪(密室殺人事件)を解き明かす!謎解きの展開はシリーズらしさがありますが、事件の壮大さは少し欠けるか。トリックはミステリを読みつくしている読者には簡単だった印象。御手洗の出番ももう少し欲しかったので、総じて島田先生にしては物足りないと思ってしまいました。まぁでも面白かったです。2021/03/24
タカギ
25
御手洗潔が医大生だった時の話。あれ…読んだことある…? それかテレビドラマか…? 20年以上前、御手洗に出会った時は御手洗はカッコ良かった。でも今見ると、どうも時代錯誤感が拭えない。女性観とか。もしかしたら、御手洗(と著者)は変わっていなくても時代が変わってしまったのかもしれない。著者は時々ネグレクト気味の子どもを出すけど、今では周りの大人たちは関わり方を注意しないと、逆に通報されそうだ。あとなんだかんだ、石岡君がいたほうが御手洗が引き立つ。2021/09/22
bluemint
21
島荘にしては珍しくコンパクトに纏まった佳作だった。いつもの大風呂敷も影を潜めて、人情感動作として読み進められた。聞いた事のない状況なのでネットで写真を見たが、参道の両脇の家屋に鳥居がめり込んでいるというあり得ないような光景だった。トリックは割と簡単にわかる。トリック一発に頼り切っているのではなく、その奥の物語が堪能できたのが嬉しい。爽やかな終わり方だが、今の読者はもう一捻り強烈などんでん返しがないと満足しないだろう。最近の著作に不満を持っている私としては、フェアな謎解きがあるだけで嬉しくなってしまった。2024/11/07