内容説明
エマニュエル・トッド、ジャック・アタリ、マルクス・ガブリエル、マハティール・モハマド、ユヴァル・ハラリ……。世界の知性21人は混迷を深める世界と人類の明日をどう見るのか。民主主義のあり方も、米中の覇権競争の行方も、グローバリズムの帰趨も、いずれも答えは一つではない。そして、一つではないからこそ、耳を傾ける価値があり、考える価値があるのだ。
第1部 「予言者」であることは難しい――エマニュエル・トッド
第2部 それでも欧州に期待する
第3部 「アラブの冬」と「帝国」の再興
第4部 世界の軸はアジアに
第5部 コロナ以後
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
kan
29
21人へのインタビュー集で、時代も内容もやや散漫な印象を受けたが、トッドやハラリやアタリやマルクス・ガブリエルだけではなく、アジアやアラブが専門の経済学者や歴史学者の話もまとめているため多面的に近年の流れを見ることができる。トランプ大統領やマクロン大統領の誕生、Brexit前後の頃のインタビューが多く、現状との答え合わせのようになっていて興味深い。コロナで今まで以上に権威主義体制や衆愚政治やポピュリズムが浸透しやすくなっており、歴史に学ぶこととその理解と解釈の重要性を再認識した。2022/08/01
田氏
18
ポピュリズム台頭やコロナ禍下における、自由や民主主義への見解。あくまで信念や規範の文法に留まる書き方で、タイトルが想像させるほどには刺激的な談話ではない。もし文字通り「限界」を論じるなら、ここに名を連ねているような「自由」の内側の論客だけではなく、外側からの視点も必要になるだろう。そういう意味では、かつて米欧の指導者に「君らの民主主義は我らには不向き。強要するのは傲慢だ」と言い放ったマハティール・モハマドや、「現代の物資供給の戦いに、民主主義は最適の制度とは言えない」と断じるパラグ・カンナの話が興味深い。2021/06/10
nbhd
16
【コロナ禍】Q.トッドさん、コロナ禍、どう?/A.私はパリから離れてブルゴーニュの片田舎で暮らし始めました。歴史人口学者としては10万人あたりの死者数に注目してます。重度の国は、ベルギー、スペイン、英国など50人以上。軽度の国は、韓国、日本、シンガポール、ドイツなど10人未満。文化人類学的には、重度の国には個人主義、リベラルといった文化的伝統があり、軽度の国には権威主義、規律重視の伝統があるってとこが特徴的です。とはいえ、コロナの死亡者数は歴史的にみれば高が知れたもので人口減少のほうがもっと深刻ですがね。2023/08/17
ta_chanko
15
世界の識者たちが共通して懸念していることは、新自由主義による行き過ぎたグローバル化、ポピュリズムの蔓延、民主主義の危機、デジタル監視社会の到来…。世界を襲ったコロナ禍により、その傾向に拍車がかかっている。どうすればこの危機を乗り越え、秩序ある世界を維持していけるのか。どの識者も、国際協力や信頼関係の重要性を訴えているが、それが崩れかかっているからこそ、危機の時代になっているわけで…。2021/03/24
テツ
14
著名人による新聞への寄稿などを纏めた一冊。世界の在り方や人々が生きる上で基本となる価値基準というものは永久不変ではなく時代や場所によって大きく変わってしまう。コロナ禍の今だからこそ、苦境と対峙する現在をどうやり過ごすのかということだけでなく、その後を考えることが必要なんだろうなと思います。本書に言葉と思考を掲載されているようなとてつもなく知恵と知識を積み重ねた方々にだって世界を読み解き人々を導くのは難しい。人という種にとって最適な群の集まり方と導き方に種としての寿命が尽きる前に到達できるのか不安になる。2021/03/05