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内容説明
二〇二〇年一月十五日に日本で最初の罹患者が確認された新型コロナウイルス感染症。中国・武漢での発生から日本への到来、一斉休校、緊急事態宣言とその解除、そして安倍政権の退陣まで。この九か月に及ぶ経緯から見えてきたのは、強大な権力を手に入れて「一強」とまで言われた「首相支配」への制約だった。安倍政権と知事らの対応のプロセスを丹念にたどり、危機が明らかにした日本の政治体制とその問題点を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hatayan
43
コロナ禍で我が国がとった対応を発端から第三波の直前の9月まで記録。政府の後手後手の対応が災いし医療体制は逼迫し4月7日の緊急事態宣言へ。与党内の権力闘争のすえ一旦決定した補正予算を組み替える形で生まれた10万円給付。緊急事態宣言を前倒しで解きGoToで経済の立て直しを急ぐ政府の姿など、2020年のコロナ禍のおさらいともいえる内容。安倍一強ともいわれ比類なき権力を獲得していた首相が、地方分権によって自律性を獲得した都道府県知事との調整に手間取り、指導力に制約を受ける場面があったことを最後に指摘しています。2020/11/27
ケー
11
コロナが確認されて菅新内閣が組閣されるまでの流れを資料を判断に用いて綴る。こうやって概観すると初期対応〜夏くらいまでの対応はかなりベターなものに見えるんだよあ。かなり客観的に書かれていてバイアスもないので読みやすい。あと、VSはしてないと思うぞ。2020/12/24
糸くず
9
新型コロナウイルス感染症の流行に対する安倍政権と地方公共団体(特に東京都と大阪府)の政策形成および実施の過程を分析。主な指摘は以下の三つ。①保健所や医療機関の「キャパシティー」が政策を大きく制限したこと。②地方公共団体が行った独自の対応が「モデル」となって国や他の地方公共団体に広がったこと。③国・地方公共団体・保健所の三者が自律性を持っているために、それぞれの間で齟齬があると、政策の実施に困難が生じること。特に重要なのが③。「一強」と呼ばれる首相の指導力の限界がコロナ危機によって露呈したのである。2020/12/12
OjohmbonX
6
安倍政権下の政府+自治体のコロナ対応の流れをまとめた本。どれだけ首相周辺の権力基盤が安定して強力でも、過去の地方分権改革の影響もあって知事との協働が不可欠になる。政権(経済優先)と知事(感染対策優先)で方向性が違うと、もともと内在していたその権力構造の二重化があらわになり可視化されてくる。著者はジャーナリストではなく政治学者で、本書は独自取材で新事実を明らかにするというより、公開済み情報と統治機構に関する既存の知識を組み合わせて、意思決定者にどういうインセンティブが働いているかを明らかにしている。2021/01/17
睡眠学習
5
日本政治学では90年代以降の改革により「首相支配」が強まったとされてきた中で、コロナの危機でなぜ安倍首相は権力を発揮できなかったのか─という主題で書きたかったようだが、なんかどちらかというと時系列まとめで終わっているような印象を受けた。 時系列まとめとして読んでも短期間で(後書きによると3ヶ月くらい)良くもこんなに膨大な記述をできたものだなと感心するが。 2021/02/04