内容説明
「そうなんだよ。面倒なんだよ。教師って」 なんとなく高校の社会科教師になってしまった桐原。 行動原理はすべて「面倒くさい」。 適当に教師生活を送ろうとするものの、なぜか周囲の人間たちが彼に面倒ごとを持ちこんでくる。 酔うと“女モード”に変身する友人、素行不良の生徒に、一方的な好意を寄せてくる生徒、神経質すぎる同僚の教師に、ヘンな格好をした隣人……。 小説すばる新人賞作家が描く、誰よりも“教師らしくない”青年の、誰よりも“センセイ”な日々。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mapion
265
面倒くさいとの思いが優先し私生活でも教師としても言動がそれなりな主人公。チャンスがあっても面倒なので女性に迫ることなく、積極的に生徒に関わり問題を引き寄せることもない。生徒のくだらない揶揄はさらりと流し、それができずに悩んでいる教師には何でできないのかと思う。面倒事から逃げる、かわす事が出来る男。それでも問題はやって来る。面倒くさいと思いながらも教師として対処すべきことと思えば、放っておかずに案外ちゃんと面倒事に向き合える。いつの間にか逃げない男に成長していたのはなぜか。楽しく読んであの人の影響かと納得。2025/08/19
優愛
169
特別やりたいこともないまま何となく高校の教師になった桐原。生徒への接し方でさえ面倒だと言い切って過ぎていく毎日にはまるで熱意がない。だからこそ後半の変化故の先生らしさはとても素敵です。こうでありたいという像を思い描く人よりも、気取らない生き方をする先生の方が好き。形に捉われずに生徒一人一人の表情が見えていると思うから。きっとこうして前よりも自分が好きだと思えるくらいには変われるはずだから。かつての印象深い先生に再会したくなりました。桐原先生の素敵な面まだまだたくさん知りたいけどこれは生徒の特権ですね(笑)2015/01/22
さてさて
159
『俺も仕事だからな。仕方なくやってんだよ。じゃなきゃやってられるか、こんなこと』。『私立高校で勤務二年目』という教師の桐原一哉の日常が描かれていくこの作品。そこには、『面倒くさい』ことごとを仕事と割り切りながら生徒と対峙する一哉の姿が描かれていました。個性豊かな人物が物語を盛り上げていくこの作品。一見、先生っぽくない教師が一番教師っぽく生徒と対峙していく摩訶不思議を見るこの作品。こんな風に教師を描くことができるんだ!と驚く、等身大の教師の実像を極めて自然体に描き上げる飛鳥井さんの上手さを感じた作品でした。2025/03/28
5 よういち
115
全てのことが"面倒くさい"桐原は、なんとなく"就職"してしまった高校の社会科教師。適当に""センセイ"をやろうとする桐原だったが、生徒や同僚教師、女友達が問題を持ち込む。さらに超ミニスカートのイエロー女が現れて...◆面倒くさいと言ってる割には、完全放置はできない桐原。周囲の人間に巻き込まれながらも、最後のポイントで自分の本音をさらけ出していこうとする。◆主人公の心の声はいたって素直で、とても好感が持てる。ほろ苦もあるけど、読後感は爽やか。"桐原も少しずつ変わってきたみたいだし、よかったね"で読了♪2019/05/06
優希
110
面白かったです。教師らしからぬ青年のセンセイな日常が青春だなと思いました。面倒くさがり屋の桐原先生。適当にセンセイをこなそうとしても面倒事に巻き込まれていくのが何とも言えず絶妙です。少しやる気がなくて飄々とした先生がいてもいいような気がしました。肩の力を抜いた方が意外と先生としてうまくやっていけるのかもしれませんね。文章も読みやすく、新たな教育青春小説という感じでした。2016/03/16