1932年の大日本帝国:あるフランス人記者の記録

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1932年の大日本帝国:あるフランス人記者の記録

  • ISBN:9784794224774

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内容説明

日本はどこへ向かっていたのか?
満洲事変の翌年、日本を取材するために来日した『ル・プチ・パリジヤン』紙の特派員
アンドレ・ヴィオリスは、当時、若手将校から崇拝の的になっていた荒木貞夫(陸相)のほか、
平沼騏一郎、安部磯雄らとも対面し、そのやりとりを含む日本人の肉声を記録した
ルポ(Le Japon et son empire, Grasset, Paris)を1933年に刊行した。
本書はその全訳に詳細な注を付した一冊である。
五・一五事件による政党政治の終焉を目の当たりにしたフランス人は、岐路に立つ日本社会を
どのように捉えたのか。風雲急を告げる時代の空気を今日に伝える貴重な記録である。


(本書より)
日本の新聞で展開されつづけている国際連盟への反対キャンペーンに話をむけてみる。
ジュネーヴの日本代表団の召還は、ありうることだとお考えなのだろうか。
一瞬、荒木将軍の微笑が消えた。ついで、ゆっくりとした口調で、
「日本が国際平和の維持を目的とする組織から去るというのは、重大な問題でありまして、
我々はまだその可能性を想定してはおりません。しかしながら(中略)もし、現状に即して
問題を解決すべきでありながら、得意になって単に感情的、感傷的な議論に終始するとしたら、
国際連盟は信用を失い、破滅へと追いやられる他はないでありましょう……。」

*

一九三二年〔昭和七年〕八月八日、〔米国国務長官〕スティムソン氏は、重要な演説のなかで
ケロッグ= ブリアン条約を引きあいにだし、アメリカは〔満洲〕侵攻によって得られた結果を
認めることを拒否し、平和のために介入する可能性も排除しないと宣言した。
どのような介入なのだろう。あれほど経済的に大きな傷を負ったアメリカが、これほど
離れた国とこれほど重大な戦争をする可能性を考慮にいれることができたのだろうか。
他方、日本に数週間滞在しただけでわかることだが、外交官や指導者は別としても、
少なくとも日本の一般世論にとっては、アメリカとの衝突という考えは不快なものではない。(中略)
私自身、日本人がいらだたしい憎しみに震える声でこう話すのを、何度耳にしたことだろう。
「ああ、せめて一九三六年〔昭和十一年〕以前に米国と戦争ができたらなあ。
そうしたら、きっと勝つことができるのに。」

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

NoControl

10
1知識人から陸軍重鎮まで、色々な層の満州事変直後の国民の声を知れる。貧富の差の拡大、長引く不況による閉塞感に対して、満州事変はそれを打破しうる手段であり、国全体としては歓迎するムードがあったことが伺える。その一方で軍国主義の到来には危機感を抱く声もあったと。訳者も解説で記しているが、著者に人種差別的な傾向と思想の偏りがあるので、書いてあること丸呑みは危険な気がする。取材対象の一人が言っていた、「このまま国がジリ貧になる位なら、戦争で当たって砕けた方がマシ」の意の発言は果たして国民のどの程度が思っていたか?2021/09/23

スプリント

10
やや偏りがあるが、当時の欧米から見た日本の印象がわかり興味深い。2021/02/06

くらーく

3
解説だけでも良いかな。本文はかなり冗長な感じがする。当時の雰囲気は良くわかる。全般にぎすぎすした感じ。貧富の差が激しい。特に農村の悲惨さは、もう限界に近いのでは。世界的に不況なので仕方ないけど、政治と軍の現実離れしたような雰囲気がちらほら。まあ、イデオロギーがぶつかり、寛容性が足りない時代だったのだろうね。 5・15事件で犬養首相が殺害されても世間の冷たいと言うのもねえ。 総合的に当時の雰囲気から言って、白色人種国家とシナに対して、戦争を挑み負けても仕方ない、それが日本の心意気だったようで。判官贔屓かね。2020/11/28

Isamash

2
フランス人女性ジャーナリストによる1932年日本の滞在ルポ。この時代の日本をこれ程鮮明に描写した著作は初。著者と共に謎の日本帝国探究に知的興奮。取材対象が荒木貞夫陸軍大臣から青年将校、左翼に右翼、中小企業経営者、学者、判事、駐在武官、フランス留学経験者等、実に幅広く感心させられる。満洲利権を断固維持しようとする世論、三井及び三菱に支配される議会政治への不信、欧米への反感、五一五事件起こした青年将校への共感等、ファシズムと破滅への流れが満載。戦前戦後で不変の流れに身を委ねる日本社会の共通性を痛感させられた。2021/05/01

貴船綏子

1
当時の日本人の言動が垣間見れる。中国が嫌がらせをすると文句言い、西洋に染まったところから日本回帰するんだ!とか今でも似たような事言ってるな。軍縮前なら米に勝てたと言う人達がいたようだけど、どの時点でやっても負けてたよ。2022/07/05

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