内容説明
台地と低地、海と湿地と川がおりなすダイナミックな地形を活かして作られた「坂と水の町」東京。徳川幕府による計画、大火や地震などの災害、文明開化、戦争、高度成長など、現在の発展の前には、都市が劇的に変革する数多の大きな起点が存在していました。それらのプロセスや出来事の重要性を、古地図・史料・風景写真、そして現代のまちを歩いて得た知見などを交えつつ、「ブラタモリ」にも出演した都市形成史の専門家がわかりやすく解説します。オリンピックを控える今、江戸の町と現在の町の利点・難点を比較し、未来の町づくりを考えるきっかけとなる一冊です
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yutaro13
41
道路から地形に興味の範囲が広がってきたので、しばらく読書のマイテーマを東京の地誌とする。まずは江戸から東京への流れをつかむ。長年住んでいるのに知らないことだらけ。江戸城の堀は高低差がかなりあり西から東へ水を流していたとか、超高層ビルや広大な公園はほとんどが大名屋敷跡地だとか。火災や地震、戦災を契機に変貌を遂げていく様子がわかる。特に本書は銀座や丸の内の変遷に詳しい。私の住むエリアは江戸の区域外なので本書の範囲外だが、武蔵野台地の南端に当たる久が原台にある。散歩で地名や高低差を意識するようになってしまった。2021/04/18
ころこ
39
雑誌などに掲載された文章をほぼそのまま載せているので、情報が雑然と並んでいる印象がある。恐らく時代別である必要はなく、坂や駅などランドマーク別で都心から郊外へ、または水の源流から下流に向かい郊外から都心へ、その中で時代区分が付けられたら、もっと良い本になったと思う。暗渠に象徴されるように、読者は東京という土地のそこに住んでいる人たちの無意識を発見したいというのがあるので、著者が読者のどこに触れようとしているのか、もっと明確にしてほしかった。2024/08/23
鉄之助
8
東京の大規模開発の土地は、元々、江戸の大名屋敷跡だったことが多い。過去の歴史の上に、現在が息づく典型例だ。2017/04/06
Wataru Hoshii
6
江戸がどのように現代の東京につながっているのかを、ビギナーも愛好家も楽しめるようにぐっと凝縮した1冊。東京の都市論は昔から大好きで、前田愛、鈴木理生あたりから読み始め、古地図も愛好しているが、それでも気付いていないトピックが色々とある。例えば、麻布や白金といった土地の独特の「ハイソ感」は、大名家下屋敷跡地というより、明治後期に宮家が移転したことによって作られたものだ、とか。どのページにも過剰なほど情報がぎっしり詰まっていて、頭に知識を定着させながら読むのはなかなか時間がかかる。続編も読んでみようかな。2019/12/11
HALI_HALI
6
自分が住んでいる街の歴史くらいは知ろう、と手にした本書。全8章構成。1〜3は江戸時代の東京。4〜5は幕末から大正にかけて西欧化した東京。6で関東大震災後の復興する東京。7〜8は戦後・高度成長期・現代を描く。東京の負の側面は江戸時代の面影が無くなる程の無秩序な開発と思う。一方で、【植民地にされる事を回避するため西欧化に邁進した】という視点で街を見ると、深みを感じられる。2019/10/06