内容説明
「生徒の命を守る」「開かれた学校」「アクティブ・ラーニング」など、
誰も反対できないような「正論」を掲げて、学校の運営をはかる管理職たち、
それを推奨する学校行政が、現場の教師たちを追い詰めている。
6つの「正論」が悪循環をもたらす教育現状を嘆いた現役教師からの悲痛な訴えとその解決提案。
たとえば、生徒の命を守ることはもちろん大切だが、それが大義名分となって
教師の日常業務を無限に拡大している。生徒が家出をしたと言えばもう授業どころではなく、
一日中教師はその対応で追われ、肝心の授業はストップしてしまう。
「私は傷つきました」と生徒が訴えれば、それはオールマイティで、
どんな理不尽な要求でも誰も逆らうことができない。
また本来なら医者、福祉士、警察などに任せるべき専門分野を教師に負わせようとするのは教育現場の混乱を招く。
この本では、都立高校で三十年に及ぶ教師体験を持つ現役教師が、近年起こっている教師たちを
過剰に縛る管理体制、片寄ったスローガン、ポリティカル・コレクトネス、
教師の人権無視の就業規則などについて、本来なら豊かで自由であるべき教育が、
本末転倒にゆがめられている実態を、様々なエピソードを通して描いている。
日本の教育の現状を考える人に格好の本。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tamami
38
三つの都立高校で副校長まで務めた後、一教師に戻った著者が記す現場からの声。「自由な社会では、教育も自由でなければ」というような、一見「正論」の前に生徒の稚拙な論理がまかり通り、結果学校側の指導が飛躍的に増えていく。教育のサービス業化の結果、教師は「都合の良いドラえもん」と化し、自由や自主をなくし官僚主義がはびこっていく。そんな現場に対して、ふつうの学校のふつうの営みが大切と、「プロ教師の会」に所属する著者は訴える。最後に「正論」と現状、対する方策がまとめられていて、学校の現状と教師の思いが伝わってくる。2021/02/08
カッパ
8
それが本当に人を納得されるものかはさておいて、著者が長年の経験から現場の教師が苦しくなる原因。正論をわかりやすくまとめている本であった。教育の場が特別な場であることは今後は難しいかもしれないが、仕事が無限大に膨らむことはストップをかけたいところである。またアクティブラーニングなどは実際にやってみると学びが教えた時よりも薄いと感じることがあるのでこれは自己満足的なものもあるように思う。ブラック化して人が集まらないと質も上がりようがないと感じた。2023/08/15
カイワレ大根
6
教育を教師がどう捉えているのか、人を育てるとはどういう営みなのか、先生の視点から見た現状について論述され参考になった。これからの学校側の諸事情の一端でも、子供を学校に預ける保護者が知っておくべきなのは間違いない。2021/05/22
るき
3
一番そうだよなぁと思ったのは、人々は教師をかつてのように尊敬はしていないのに都合の良いドラえもんのようなものだと思っていて実現不可能なあらゆる教育サービスが当然のものとして要求される。というところですね。正論に振り回されて悪循環を起こしてるのが今の教育。 教育の限界を知ったうえで、教育を行うべきだという主張でした。2021/05/13
mokohei
0
想定してた内容とは違った2023/04/02