講談社文芸文庫<br> 野鴨

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講談社文芸文庫
野鴨

  • 著者名:庄野潤三【著】
  • 価格 ¥1,265(本体¥1,150)
  • 講談社(2021/02発売)
  • ポイント 11pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784062901123

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内容説明

はかなく取りとめない日常の中に現代の至福を描き出す長篇小説。家族を愛し人生を慈しむ――丘の上に住む作家一家。息子たちは高校生・大学生になり、嫁いだ娘も赤ん坊を背負ってしばしばやってくる。ある時から作家は机の前に視点を定め、外に向いては木、花、野鳥など身近な自然の日々の移ろいを、内では、家族に生起する悲喜交々の小事件を、揺るぎない観察眼と無限の愛情を以て、時の流れの中に描き留めた。名作『夕べの雲』『絵合せ』に続く充実期の作家が、大いなる実験精神で取り組んだ長篇。
◎庭に来る鳥や、庭の樹木から書き起こされる章が多いが、人の心が自然現象のなかに融け、照らし出されているように感じられる。八章には、「四十雀が飛び立ったあと、水盤の水に映った空が揺れている。」という小景描写があった。水面が揺れているのではなく空が揺れている。こんなところを読むと、今、見ているような気がする。昭和の小説には、このような豊かさがあった。<小池昌代「解説」より>

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

うた

10
ぼんやりと、あれはいつだったかこれはいつだったかと、日常の由無しごとを思い出すところから語り出される。そのため家族にかかわる時間がゆるく折り重ねられており、一読しただけではこの小説の造りを捉えられなくしている。なんでもないように見えてよく練られた一冊。2019/03/13

ぱせり

6
「はかなく、取りとめないが、もしもこのうちのひとつでも欠けたら、私はきっと味気なく思ったに違いない」と著者の振り返る日常の物語に、思い出話として顔を出す亡くなった肉親たち。長く会わない知人。幼いころの子どもたち。過ぎてみればだれも覚えていないかもしれない一瞬だけれど、現在に続いている。未来の物語はどこまでもあると感じる。それがいいんだ。2014/03/16

utataneneko

5
結婚して近所に住む娘や高校・大学生の子供たちとの会話、近所の人たちや親戚とのやりとり、庭の木々や遊びにくる鳥たちの様子…。そんな日常的でたわいもないエピソードがつづられていくのに、しみじみいいなあと思う。四季を感じたり、人付き合いを大事にしたり、物を繕って使ったりする、素朴で古き良き生活。今の自分、そして現代のせわしない時代では、失われ、気にも留められなくなっている。でもよく考えてみれば、まだ今の自分たちの日常にもこういう良き部分がまだ残っているかもしれない、それを大切にしていかなければ…と思わされる。2014/08/22

ゆかっぴ

4
久しぶりに懐かしい我が家に帰ってきたかのような、ほっとする一冊でした。何気ない日常のひとこまに穏やかな安心感とほんのりとした幸せを感じます。2013/11/10

はるたろうQQ

3
解説の小池昌代が言うように本書は、晩年の作品群の暖かいが静寂な光に満ちた世界と比べると、モチーフは同じだがもう少し陰影がある。晩年の作品群には「悪意」の欠片も出てこないが、本書には明夫が甥の赤ん坊を気持ち悪いと言ったり、明夫が弟の良二に「ジャイアン」的にちょっかいを出したり、良二はどことなく思春期特有の内に籠る感じで描かれている。亡くなった母や長兄に対し、具体的な思い出と共に何もしてやれなかったという悔悟の感情も出てくる。晩年の作品群を読み慣れていると、陰影や綾とも言い兼ねるこういった場面にドキッとする。2018/09/27

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