アリストテレス『ニコマコス倫理学』を読む - 幸福とは何か

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アリストテレス『ニコマコス倫理学』を読む - 幸福とは何か

  • 著者名:菅豊彦
  • 価格 ¥2,530(本体¥2,300)
  • 勁草書房(2021/02発売)
  • ポイント 23pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784326154371

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内容説明

西欧倫理思想に最も大きな影響を与えてきた古典でありながら、プラトンの『ソクラテスの弁明』などにくらべてわかりにくい印象のあった『ニコマコス倫理学』。本書はその全10巻を、テキストの文章をできるだけ具体的に引きながら丁寧に解説し、アリストテレスが徳の習得と幸福の関係をどのように捉えていたかを明らかにする。

目次

まえがき

序章  アリストテレスと先行思想――ノモスとピュシス
 1 「ノモス(法、慣習、規範)」と「ピュシス(自然本来にあるもの)
 2 ソクラテスの「徳の探求」からアリストテレスの「徳の教育」へ
 3 アリストテレスの存在論とイデア論批判

第一章  幸福(エウダイモニア)とは何か
 1 最高善としてのエウダイモニア――「善」と「幸福」を結合する思想
 2 アリストテレスの「幸福」観
 3 「幸福」についての基本的見解(1)――「幸福」の形式的規定
 4 「幸福」についての基本的見解(2)――「人間に固有の機能(エルゴン)」とは何か
 5 「幸福」の諸条件

第二章  人はどのようにして徳ある人へと成長するか
 1 「徳の教育」の前提である「しつけ、訓練」――「正しい感受性」の育成
 2 「快楽、よろこび(hedus)」と「美しさ、立派さ(kalon)」――「美しさ」を認めた行為を遂行することの「よろこび」
 3 「性格の徳」の定義のこころみ――中庸説について

第三章  性格の徳と思慮との関係
 1 「思慮の働き」と「実践的推論」
 2 第二の自然としての、性格の徳と思慮

第四章  徳とアクラシア
 1 「アクラシア(無抑制)」はどうして成立するか
 2 徳ある人(思慮ある人)と抑制ある人・無抑制な人との区別

第五章  友愛について
 1 友愛の三つの種類
 2 自己愛と友愛
 3 幸福と友愛

第六章  観想と実践
 1 観想活動とは何か
 2 エルゴン・アーギュメント――「実践的な徳」と「観想的な徳」の解明
 3 「観想活動の生」と「実践活動の生」の関係


あとがき
『ニコマコス倫理学』出典索引
事項索引
人名索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ころこ

46
大変丁寧で、分かり易い言葉で書かれた本です。全体の理解にも配慮があるものの、やはり細かい議論を正確に記述することに重心が置かれているので、分類分けやリファレンスが多く、本体を読んだひと向けの学術的な本かなと思います。幸い『100分De名著』で取り上げられましたので、そちらを優先してまずは読むべきかと。前半はプラトン、後半はカントとの比較によってアリストテレスの思想を浮かび上がらせようとしており、特にカントとの比較は最も現代と接続されている部分で、我々が倫理を考える上で軽視できない論点です。2022/05/31

buuupuuu

16
マクダウェルなどの現代的な徳倫理学に従って、徳の内実を言表不可能なものとし、思慮を普遍ではなく個別的な状況に関わるものと解釈している。すなわち徳のある人に、状況の中で重視すべき事柄を際立たせ、振る舞いの理由を明確化することが思慮の役割である。また、徳の内実を普遍的に規定できないがゆえに、アリストテレスは学習という観点から徳にアプローチしていることが説明されている。冒頭で、ソクラテス以来の課題としてノモスへの懐疑の克服が挙げられているのだが、そこでアリストテレスが頼るのがエンドクサだというのが面白いと思う。2023/03/23

東雲そら

3
アリストテレスがリュケイオン(プラトンでいうアカデミア)で行った講義を、息子のニコマコスが編集した古代の倫理書。幸福(最高善)を"徳に基づく魂の理性的活動"=最善の生を全うすることと定義し、『享楽』『名誉』『知』の三つに区分している。さらに「実践」と「観想」に分け、知っていて行う、行わない(抑制と無抑制、アクラシアの概念)も加えてカテゴライズして考えるという、メモで図解しながら読まないと、なかなか頭に入ってこなかった。著者もカントの解釈を参考にすることを勧めている。2019/03/04

くま

2
原典を読んでとても難しかったので解説書を読もうと、こちらを読んでみたがやはり私には難しかった。古代ギリシアと現在の言葉では、意味のニュアンスが違う点が難しい部分の一つな気がする。幸福…ギリシア語では最高善(人々が目指すもの)、友愛…親と子、客と店員といった社会的な人間関係のように、そこを理解しながらでないと、内容が正確に理解できないと感じた。2022/02/23

asfgrs

1
続けての再読。初回よりも、理解が深まったと感じる。アリストテレスは幸福について「観想的な徳に基づく魂の理性的活動であり、その他の善はこの感想活動のために望ましいものである」と述べている。しかし、本書を読み進める中で、幸福に格付けをするのはおこがましいのではないか、倫理の中のみに幸福を見出すのは実態とことなるのではないか、など、もろもろの発想に至った。今後、アリストテレスの原著、カント、ショーペンハウアーを読んだ上で自身の幸福論を形にしたい。2022/06/29

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