内容説明
「言った、言わないが起こるのはなぜ?」「SNSの文章が炎上しやすい」「忖度はなぜ起こる?」……理論言語学の知見を使い、単語の多義性や曖昧性、意味解釈の広がり方や狭まり方、文脈や背景との関係などを身近な例から豊富に解説。文の構造を立体的に む視点が身につき言葉の感覚がクリアになる、実践的案内。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
77
言語学・・何度か、耳にしたことがある分野。何となくのイメージしかない。それもあるが、ふだん使いという言葉に惹かれた。何気なく使っている言葉。話言葉、書き言葉。それを受け取るほうでもある。ここ数年、職場で、特に外部にでる言葉に気を付けるようになった。それを振り返るに、いいタイミングで出合った。まずは、何か違和感を感じるかどうかだろうと思う。そこで、考え直す時間をとることで、随分、わかりやすくなると思う。わかりやすいとは、解釈の幅がシンプルになることかと思う。必然的に、誤解もなくなると思う。2021/04/12
アナーキー靴下
73
言語学者である著者が、理論言語学の視点で日本語についてあれこれ説明してくれる本。期待しすぎたか個人的にはイマイチ。例文を交えて丁寧に説明してくれるのだが、言葉について言葉だけで説明するというのはどうしても冗長な印象。また、おかしな例文は、日本語としての不自然さを読者も感じること前提なのが…おかしいと感じるなら目新しくはなく、感じないなら著者の説明で納得できるのか疑問だ。即効性ではなく基礎力向上、構造的に理解するには役立つので、日本語教師の方など、考えたこともなかった類いの、鋭い質問を受ける人には良いかも。2021/06/29
みき
59
言語は自然的なものであるし地域によっても特性が強い。そんな中でこれを科学的に研究対象とするのであるから学者さんの苦労も伺えようもの。後書きにある筆者の「これは本当に科学と呼べるのか」という問いかけは偽らざる本音でおそらく筆者もそういう自問と戦っていたのだろう。そんな中で言葉の基礎力を鍛えるために言語学の基礎を学んでみよう、言語学の良いとこ取りをして日常に活かしてみようとするコンセプトは非常に面白い。内容も文法から意味的なところまで題名のとおり「普段使い」に言語学の使用方法が解説されている。間違いなく良書。2024/01/22
tamami
50
本書を中程まで読みながら、強い既読観に囚われ積ん読本の書棚を探したりもした。一年ほど前に読んだ同著者の新書本『ヒトの言葉機械の言葉』に引用された例文に似たものを感じたのかも知れない。理論言語学が専門という著者は、我々がふだん読み書きする文章や会話を取り上げ、誤解を招くような話し方や書き方の例を具体的に指摘し、修正あるいは代替案を示してくれる。誤解のもとは、言葉のもつ多義性や複雑な文章構成にもあるとする説明は分かりやすい。一人で文章を推敲したり、他人の書き物を点検する際の参考書として大いに活用が期待される。2021/12/29
かんやん
33
普段当たり前に使っている言語であるが、その使用には膨大な知識が必要である。何か妙だなとある表現に引っかかったりするのも、この無意識の知識があるからで、これを意識化するのが理論言語学。とはいえ、正しい日本語を推奨するわけではない(規則は世代や地域により異なるのだから)。先ず文法があってそれに従って言葉を運用するのではなく、実際に使用されている言葉の隠された規則を見出してゆく「道なき道を切り開きながら進むような」困難な学問で、著者はもう十数年距離を置いている、と。本書は現代文のドリルのようで気軽に読めます。2021/07/24