内容説明
僕をつくったあの店は、もうない――。
子供の頃、親に連れられて行ったレストラン、デートで行った喫茶店、仲間と入り浸った居酒屋……。誰にも必ず一つはある思い出の飲食店と、舌に残る味の記憶。
「どこにあるかわかんねー」とか「もうなくなっちゃったよ」とか「事情があっていけない」、あるいは「くっそまずくてもう行かねえ!」とか、そういう誰かの記憶に残るお店の数々を、人気芸人からアイドル、作家、ミュージシャン、映画監督、芸術家、マンガ家、イラストレーター、クレイジージャーニー、クリエイター、編集者に女王様まで、各界の著名人総勢100人が100通りの文体で綴る悲喜こもごもの人生劇場。
もう行けない店、味わえない味、酔っぱらえないカウンター。100人の記憶と100軒の「二度と行けないあの店」について、640頁の大ボリュームと都築響一による写真でお届けする追憶のグルメガイド――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
空猫
41
辞書のような厚み。100人100様のエッセイ。「二度と行けない」とは「閉店」以外に「トラブル、恥ずかしい思い」で「顔向けできない」や「酩酊状態でないとたどり着けない」「美しい思いでのままにしたい」など十人十色の原因があった。難を言えばこちらが知らない人の話には共鳴できなかったが。思い出のついで、といった話もあり飽きない。挟まれる写真のシュールさも良い。借りて読む本でないかった。じっくり一話ずつ、時間をかけて読みたい本。2022/01/03
ばんだねいっぺい
36
あー、これは、いい企画、いい本。100人が語る「二度と行けないあの店」の思い出。人の思い出の中に勝手に自分の思い出が浮かび、感情のツボを押されて涙腺がゆるむ。2021/04/07
あじ
33
几帳面に整えられた店構えを担保に入店するも、結末が泣き笑いだったいしいしんじさん。密入国と二回の強制送還でビザ発給停止になった高野秀行さんが恋しがる、現地の名物料理とは……?誰もがスケッチできる“外食の思い出”を束ねた総勢100人によるアンソロジーエッセイ。どうして“二度といけないのか”それには様々な理由があるのですね。福袋でありお楽しみ袋でもあり、執筆陣のネームに一喜一憂しちゃいました。2021/06/24
tom
16
100人が「かつて行ったことのあり、今はなくなってしまったお店」の記憶を語る。記憶に残ってるくらいだから、良い思い出も悪い思い出もあるのだけど、圧倒的の多いのは、もの悲しい内容。現在の自分から見る過去の出来事というのは、もの悲しさとリンクして記憶に留められるものなのかもしれない。まあ、「二度と行けない」というフレーズから生み出されるノスタルジーというものかも。ということで、読んでいてちょっとしんどくもあった語りの本。私としては、前作のTシャツの記憶の方が楽しかったのでした。2021/06/18
今庄和恵@マチカドホケン室/コネクトロン
14
この分厚い本が1ヶ月半で3刷ってすごいな!著者の有料メルマガに連載された100本のストーリー。メルマガにかける思いを、字数を気にせずリリースできるから、と語っていらっしゃるのを目にしたけど、字数を気にせずにネット上で連載されたものを紙の本にするとこうなるのだな。今は存在しない料理店の思い出が詰まった「役に立たないグルメガイド」、だって店がもうないから。記憶の糸を手繰り寄せるグルメガイドは、いずれもセピア色(ぷっ)を纏っている感じ。食べたものではなく、食べた自分への思いが綴られているようだ。2021/11/29