書く、読む、生きる

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書く、読む、生きる

  • 著者名:古井由吉
  • 価格 ¥2,420(本体¥2,200)
  • 草思社(2021/01発売)
  • ポイント 22pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784794224798

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内容説明

日本文学の巨星が遺した
講演録、単行本未収録エッセイ、芥川賞選評を集成。

「一行も書けなくなるような境地がある。
そこにさらされたとき、
その奥から何かが見えてくる。」

作家稼業、書くことと読むこと、日本文学とドイツ文学、近代語と古典語、翻訳と創作、散文と韻文、口語と文語、「私」と「集合的自我」、夏目漱石『硝子戸の中』『夢十夜』、永井荷風、徳田秋聲『黴』『新世帯』、瀧井孝作『無限抱擁』、馬と近代文学、キケロ、シュティフター、ゴーゴリ、ジョイス、浅野川と犀川、競馬場と競馬客、疫病と戦乱、東京大空襲、東日本大震災、生者と死者、病と世の災い――。深奥な認識を唯一無二の口調、文体で語り、綴る。「候補作全体の評定よりも、ひとつの作品へ宛てて書くことが多かった」芥川賞全選評を収録。

【目次】
I
書く、生きる/読むこと、書くこと/作家渡世三十余年/ドイツ文学から作家へ/翻訳と創作と/小説の言葉/言葉について/凝滞する時間/秋聲と私/野間宏と戦後文学/わが人生最高の十冊/ここはひとつ腹を据えて

II
読書ノート(『ヴイヨンの妻』太宰治著、『東京焼盡』内田百閒著/牧野信一と嘉村礒多/『無限抱擁』瀧井孝作著)/読書日記/無彩の町に紺・黒・柿色/無知は無垢/森の散策(『老境について』キケロ著/『天の川幻想』小泉八雲著/『中世知識人の肖像』アラン・ド・リベラ著/『死者のいる中世』小池寿子著/『愛日』高井有一著/『東語西話――室町文化寸描』今泉淑夫著/『ディカーニカ近郷夜話』ゴーゴリ著)/馬の文化叢書 第九巻「文学――馬と近代文学」解題/土手――幻想の往来/バラムの話/思い出の映画『リチャード三世』/『硝子戸の中』から/「この人・この三冊」シュティフター/昨日読んだ文庫/出あいの風景(たずねびとの時間/雨の朝 暗い日常/童顔/自分を探す/キャロ)/生前のつぶやき/浅野川/水の匂いの路筋/破られぬ静寂のなかへ/だから競馬はやめられない/馬券的中の恐ろしさ/言葉の失せた世界/鐘の声/日記/我が病と世の災いと

III
芥川龍之介賞選評(自縄自縛の手答え/「欠損」をめぐる文学/アンセクシュアルな現実/融合と分離と沈黙と/「ぼく」小説ふたつ/失われたことへの自足/百回目は――/行き詰まればこそ/雑感/感想/LOVEの小説/選評/「暴力の舟」を推す/無機的なものをくぐって/試みるうちに超える/寂寥への到達/虚構への再接近/難所にかかる/選評/終息なのか先触れなのか/屈伸の間/漂流の小説/転機にかかる/騒がしき背理/見取り図の試み/現在と遠方と/冒険の旅立ち/実際の幽明/あぶない試み/停滞のもとで/水の誘い/穏やかな霊異/「悪文」の架ける虹/対者を求めて/意識と意志/意識の文学/がらんどうの背中/例話の始まり/尚早の老い)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

KAZOO

104
古井由吉さんのエッセイです。この方の作品は「杳子」くらいしか読んだことがなかったのですが、この読メの感想を読んで興味を持ち手に取りました。講演録や読書に関するエッセイ、芥川賞選評などが収められていてかなり楽しむことができました。またもともとドイツ語の先生で金沢大学や立教大学で教えておられることも知りました。とくに芥川賞の選評は比較的最近のものが多くこの方独自の批評が知れて印象に残りました。2023/07/05

yumiha

46
著者の芥川賞選評が載っているので、チョイス。真っ先に読んだ。受賞作かどうかには関係なく、気になった候補作だけを丁寧に読み解いてくれるのがうれしい。また、イマドキの作品ならどう読まれただろうと気になった。講演会記録では、『連れ連れに文学を語る』(対談集)に出てきたあの話だなと思う。驚いたのは、浅野川が金沢の街を南東から北西へ流れているという記述。なんですと⁉浅野川が東で犀川が西ですと⁉石川県出身で金沢の街へ何度も行っている私ですら、太平洋側で育った方々のように、東西南北を勘違いしていた。方向音痴ですね…。2023/03/31

原玉幸子

20
芥川賞『杳子』に引続き、同作品の著者創作の閃きに繋がるヒントになればと思い、たまたま目にした同氏のエッセイを選びました。各雑誌への寄稿の寄せ集めでは、Ⅰは内容に重複感があり構成がちょっと残念なところもありましたが、Ⅱの金沢の自然に旅情を感じる描写や、大好きな競馬、老齢の自覚等々の言葉の使い回しが、正しく昭和の作家の重厚感と安定感(世の中に怒りはあるのでしょうが、言葉を荒げない)で、落ち着いて頁を繰ることが出来ました。Ⅲ芥川賞選考メモは、特に言葉と表現が難解、時に複雑で、素直に憧れます。(◎2020年・冬)2021/01/22

かつみす

8
独自の文体をもった古井さんの小説を読もうとすると、最近はいつも途中で挫折。むしろ『人生の色気』『反自叙伝』のような座談的なものが敷居が低くて私は好きだ。この人の人生経験の豊かさに触れることができるし、語り口も素晴らしいので。この本はスピーチ、読書ノート、日録、選評など小さな文章を集めている。断片のような小文でも繰り返して読むほどに味わいが出てくる。すべて読んでいないけれど、とても良い一節があって、付箋をつけたりしたので、この本はたぶんずっと手元に置いておくことになるだろう。亡くなられてもうすぐ一年になる。2021/01/10

ロータス

7
2月に読んだ本の中で1番良かった。何度も何度も感嘆し、立ち止まり、唸らされた。こんなに凄い本はなかなかない。講演など話し言葉で書かれたものが多数収められているため、先日読んだ『私のエッセイズム』より読みやすいが、内容の奥深さは変わらない。また、安田登『あわいの力』と呼応する箇所も多く、特に「昔は新聞も本も声に出して読むものだった」という指摘に古典を読むことの意義と朗読の必要性を思う。芥川賞の選評でも氏の文学に対する熱量に感服。まるで宝石のような本だ。2021/02/28

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