内容説明
「便利屋と呼んでください」その男の特徴はとくには…ない。ロボットのような得体のしれない新キャラクター・便利屋。まるで死神のようであり、悪役なのか助っ人なのか得体が知れない。
議員の息子が誘拐され、身代金要求が犯人から来た。金を工面しようと事務所の金庫へ向かった秘書が暴漢に襲われ、現金を奪われる。ところが、その金はなんと、偽札だったと警察に知らされる。八方ふさがりになり、便利屋に依頼をする……。一方、捜査一課の刑事の巨漢の男・都築は、街に発生する事件を追ううちに、一人の人間に行きつく――便利屋だ。背徳の街・槻津市では、今日も政治家や葬儀屋、学校、旅行会社と次々と悪事を働いている。暴力で相手を屈服させるのではなく、悪事を捻り出す知力(悪知恵)で騙し合っている。
『極上の罠をあなたに』(単行本)に、書下ろし4編を加えた文庫版新装版では、都築は探偵事務所の所長に。ついに便利屋の正体が明かされる!
電子書籍特典として、本書の発売にあわせて書き下ろされた「インタールード 刑事の恋」を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
178
久しぶりの深木さんは『極上の罠をあなたに』の4話と書き下ろしの4話を加えての文庫化です。あの『便利屋』の正体が判明してビックリ!元刑事の探偵・都築とのラストもこれしかないよねと一人ごちるが、またまた罠に嵌られっぱなしの私だった。全編悪人ばっかりで食傷気味なのが正直なところ(汗)『悪と悪とが共喰い祭り』の帯は間違いなくそそられる。2021/02/11
タイ子
92
登場する人物が全部ワルって言うのも珍しい。事件には被害者がいて時には同情しながら読むのだが、ここに出てくるヤツラに同情の余地なし。俯瞰状態で読めるので他人事に面白い。加害者と被害者がいて、被害者がまた加害者になる。手口もエグいのやら、呆れるのやら。ただ一人「便利屋」と名乗る謎の人物が作品(連作短編集)の肝になっていて、悪だくみのヤツラに何かと関係してくる。彼は一体誰?ラストに明かされる驚きの人物、その企みがへぇ~な状態。殺人あり、替え玉受験あり、世の中の悪を全集合させたような最後に笑うヤツは誰だ?面白い!2021/03/28
ごみごみ
61
「極上の罠をあなたに」の文庫改題に、続編4編が追加された連作短編集。よくもまあこんな身近に悪いヤツばっかり(笑) これでもか、と私利私欲に塗れたヤツらが騙し騙され・・事件の影には必ずあの「便利屋」が絡んでいる。単行本では明らかにされてなかった便利屋の正体が判明。その役割とは? なるほど、便利屋からのダイレクトメールが届いたら要注意!2021/04/25
坂城 弥生
56
悪党たちの後押しをする謎の『便利屋』同じ市で起こっているから章ごとに違う悪党が出てくるのに、ちゃんと繋がりがあって夢中で読みました。2021/01/29
えみ
54
悪が悪を駆逐するこの暗い悦びをどう伝えたらいいのだろう。とにかく読んでみて!いっそ清々しいほどの極悪非道の人間の振舞いを目撃できる。それはもう雨後の筍。繕うことのない剥き出しの悪。本物の悪人達が自分の保身の為だけに罠を仕掛けて闇に落とす。地獄絵図をここに見た。少し後押しすれば犯罪を起こすだろう人間の前に諮ったように現れる“便利屋”を名乗る男。「人に頼みづらいが、自分でやるのはちょっと…」ダイレクトメールの謳い文句は犯罪予備軍を誘う甘い罠か、それとも救いの手か?犯罪の陰に便利屋あり。どんでん返しミステリー!2021/02/04