同性婚論争 - 「家族」をめぐるアメリカの文化戦争

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同性婚論争 - 「家族」をめぐるアメリカの文化戦争

  • ISBN:9784766427004

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内容説明

わたしたちは「家族」になれるのか?


◎アメリカ大統領選を左右する存在のひとつ、福音派 evangelicalと呼ばれるキリスト教右派はこれまで共和党の大票田として、同性婚、人工妊娠中絶、公立学校での祈りの実践、銃規制など文化的価値観のかかわる政治決定を左右してきた。

◎本書は、アメリカを舞台に1950年代からはじまった同性愛者の権利運動が、福音派を中心とする保守から激しい反動(バックラッシュ)を受けながらも、いかに自分たちの権利向上を訴え、2015年に同性婚(婚姻の平等)を実現したのか、その半世紀以上にわたるダイナミックな歴史を辿る。

◎過去に苛烈な同性愛者差別があった保守傾向の強いアメリカで、なぜ同性婚は実現しえたのか。本書ではこの問いに対し、「家族」という価値観に焦点を当て、保守の反動の中にある同性愛への忌避と恐怖の本質を浮き彫りにしつつ、同時に、社会が同性愛者の訴訟戦略に代表される権利運動をつうじて、彼らの権利保障の重要性を認識し、社会制度、法制度を大きく変えていく過程を忠実に描き出す。

◎終章では、アメリカの歴史をふまえて、同性婚の是非をめぐる議論がはじまったばかりの日本の現状や、現在、同性カップルがどのような不利益を被っているのか具体的に明らかにし、憲法や福祉の観点から同性婚を実現すべき根拠を説得的に提示する、時宜を得た挑戦的な一冊

目次

はじめに


第1章 ホモファイル運動のはじまり

 同性愛差別のアメリカ史
 ラヴェンダー狩りとホモファイル運動のはじまり
 1969年のストーンウォール暴動──「アンタどうかしてるの? これは革命なのよ!」
 初の同性婚訴訟──ベイカー対ネルソン判決(1970年)
 オープンリー・ゲイの議員ハーヴェイ・ミルク


第2章 宗教右派のアンチ同性愛キャンペーン

 宗教国家としてのアメリカ
 1970年代、社会のリベラル化と宗教右派の台頭
 政治勢力としての宗教右派
 「子どもたちを守れ」キャンペーン


第3章 エイズ・パニックから婚姻防衛法へ
――1980年代からの変化

 エイズ・パニックと差別の激化
 ソドミー法かプライヴァシーの権利か――ボワーズ対ハードウィック判決(1986年)
 同性婚は特別な権利?――コロラド州憲法修正案修正2
 同性婚を認めないのは性差別か──ハワイ州ベアー対ルウィン判決(1993年)
 動き出す宗教右派──第二次バックラッシュ
 異性婚と子からなる家族こそが大事──家族の価値
 婚姻は男女間の結びつき──婚姻防衛法
 婚姻防衛法は合憲か?


第4章 本格化する同性婚訴訟

 ソドミー法はプライヴァシー権侵害──ローレンス対テキサス判決(2003年)
 婚姻する権利とは何か──判例と学説
 マサチューセッツ州で全米初の同性婚──グッドリッジ対公衆衛生局判決(2003年)
 ブッシュ大統領の「神聖な結婚」演説と婚姻許可証発行騒ぎ
 連邦婚姻修正──「婚姻は男女間の結びつき」


第5章 なぜ同性婚は実現したのか
 ──オバマ政権での展開と世論の逆転

 アメリカを訴えたウィンザー ──婚姻防衛法違憲判決(2013年)
 カリフォルニア州憲法修正案、提案8号
 同性婚をめぐる世論の逆転
 全米レベルの同性婚の実現──オバーゲフェル判決の勝利(2015年)
 なぜ同性婚は実現したのか──基本的権利をめぐるジレンマ
 性的マイノリティのこれから
 同性婚がもたらした効果


終章 日本で同性婚は実現するか?

 同性パートナーシップ制度の広がり
 同性カップルが被る様々な不利益
 憲法からみた同性婚
 憲法24条が保障する「婚姻の自由」
 原理としての憲法24条
 家族主義の日本こそ同性婚を認めるべきか──福祉国家レジームからの考察
 日本の同性婚をめぐる動き


 画像クレジット
 おすすめ書籍紹介
 あとがき
 註
 主要判例一覧
 索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

那由田 忠

21
日本の同性婚をどうするかを考えるために読んだ。宗教的信念からの同性婚否定という古くからの動きに対して、平等な尊厳の観点から同性カップルの増加とゲイ解放の進展が進んだ。同性愛カップルが他人を害しないために親密な生き方を選び取る個々人の権利は否定できない。先進的な州の成果がカップルの移住によって、古い考えの州においても既成事実を否定しがたいという形で、法的な考え方の変更が連邦レベルで実現するメカニズムが働いた。日本はサラリーマン夫婦優遇があるので、同性婚に同じ優遇を与えるかが最大問題となるだろう。2022/06/04

katoyann

20
アメリカの同性婚に関する議論を検証した法学の博士論文。ゲイ解放運動から宗教右派によるバックラッシュを経て、連邦最高裁の同性婚合憲判決までの議論の経過を説明している。 宗教右派が反同性愛を掲げて政治に介入するようになった歴史など、同性婚をめぐる権力作用について勉強になる。 潮目が一気に変わったのは、バラク・オバマ政権誕生以降。彼が婚姻防衛法を違憲とし、同性婚の実現を大統領選の争点にしたところから法解釈が進んだ。同性婚は親密な生を享受する権利に対応する。その実現により自殺未遂のリスクが下がったという。読もう!2021/06/26

犬養三千代

9
LGBT。様々な指向がある。アメリカでおこった同性婚、人工妊娠中絶、銃規制など文化的価値をめぐる対立といての論争を文化戦争と名付けている。1950年くらいから現在までの積み上げられた訴訟や運動を細かにおっている。最終章は日本の動きだ。まだまだ日米とも終わりは来ない。棚瀬先生の「同性愛の人は、誰かを傷つけるわけじゃないよね」けだし名言。価値観の相違を認め合うそんな世界を目指そう!2021/02/19

kenitirokikuti

7
図書館にて。2020年刊行だが、2011年提出の博士号授与論文「同性婚と『家族の価値』ー合衆国文化戦争の一側面」ベースにしたもの。2015年のオーバーグフェル対ホッジス判決(同性婚の禁止は連邦憲法違反と)までの諸判決を取り上げている。ひさしぶりの米憲法史だったので頭が疲れちゃった…▲ホモがダメとか白人が黒人と結婚するの禁止とか避妊具の使用は違法とかそういう世界だった。プライベートなホモセックスが重罪ってのが違憲にならなかったのが、同性婚運動が主流になった理由のひとつ。2023/09/03

Olive

6
同性婚成立までの50年あまりの時代は、アメリカという国家の持つ宗教観に基づいた「家族とは何か」を国家総出で考えた時代だったのだろう。 宗教右派の思想、そしてそれを取り込んだ政治の世界、エイズ・パニック等、多方面からとらえるとどれだけ時間と文献が必要だろうか。大学の先生である小泉氏は平易な言葉で、解りやすく解説してくれ、私のような者にもたいへん読みやすかった。⇒2021/03/28

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