岩波新書<br> 暴君 - シェイクスピアの政治学

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岩波新書
暴君 - シェイクスピアの政治学

  • ISBN:9784004318460

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内容説明

政治は行き詰まり,人々は裏切られることに慣れ,経済的困窮はポピュリストの怒りをあおり…….なぜ国家は繰り返し暴君の手に落ちるのか.暴君と圧政誕生の社会的,心理的原因を探り,絶対的権力への欲望とそれがもたらす悲惨な結末を見事に描いたシェイクスピアが現代に警鐘を鳴らす.

目次

第1章 斜にかまえて┴第2章 党利党略┴第3章 いんちきポピュリズム┴第4章 性格の問題┴第5章 支援者たち┴第6章 勝ち誇る暴君┴第7章 唆す者┴第8章 位高き者の狂気┴第9章 没落と復活┴第10章 抑えることのできる頭角┴結部┴謝辞┴原注

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

358
巻末の紹介によれば、著者のスティーヴン・グリーンブラットは「ハーバード大学教授。シェイクスピアの世界的大家」、訳者の河合祥一郎氏は現在の日本のシェイクスピア研究の第一人者。著者が本書を書くことになったのはトランプの大統領選当選を受けて「私に何ができる?」と自問した結果である。あくまでも「斜にかまえて」シェイクスピアの政治学を語りつつ、「暴君」の姿の形象のさまざまを描き出し、対策を模索しようとしたのである。そもそもシェイクスピア自身も過去の歴史上の人物たちに仮託しながら自らの劇を創っていた。いわばそれは⇒2022/12/06

ケイ

128
グリーンブラットは、Hilary MantelがWolf Hallを出してほどなく興味深い批評をしていた。シェイクスピア批評の大家だから黙っていられなかったのはわかる。作者の例える暴君は彼か…と勘ぐっての読書にもなったのは少し残念。シェイクスピアの歴史劇を論じた前半が特に興味深し。リチャード三世のサイコパスぶりには、歴史的人物を超えた稀代の悪役としての魅力があると気付かされた。民衆を扇動したケイドの言う、字を読めるだけで悪者、だから弁護士は敵だとの理論。文字は階層を分けるものの一つだったのだ。2022/10/25

KAZOO

121
コミックの「7人にシェイクスピア」を読んでいてかなりエリザベス女王などのことを書かれているので訳される前からこの本が気になっていました。よく岩波新書で出してくれたと思います。シェイクスピアが劇に仕上げた作品の中にはこの題名のような人物が多くいます。当時の政治状況などを見るとかなり権力者でないと納めることも難しかったのかもしれません。どこかの国の大統領に似た人物もいます。楽しめる本でした。2020/11/10

syaori

77
作者は『リチャード三世』や『リア王』等を例に、暴君について語ってゆきます。曰く暴君は「ワンマンの被害妄想の自己愛的な支配者」で、その暴政は『冬物語』で16年の歳月と死んだ息子を取り戻せないように「決して癒され得ない傷を残す」のだ。同時に暴君の台頭には、面倒を避けたいがために命令に従う人々など「広範囲に亘る共謀」があることを示唆します。暴君と暴政を止めるのは暴君への支持を叫べと強要されても黙っていることなど「普通の市民の政治活動」なのだという言葉は、自分の小さな政治的表明の大切さを再認識させてくれました。2025/01/16

パトラッシュ

59
軽蔑する民衆を操って叛乱を起こさせたヨーク公、権力を握るため甥や支援者をも殺したリチャード3世ら400年前にシェイクスピアが描いた暴君たちを通じて、なぜ現代のアメリカ人がトランプを指導者に選んだのかを考える。リチャードを「法を憎み強烈な支配欲を持ち勝つことだけを話したがるナルシシスト」と分析するのは、ほとんどリベラル派から見たトランプ像だ。暴君の支配に落ちた人びとが祖国を嘆く場面に、トランプのアメリカへの怒りが伝わる。彼を支持する民衆への絶望から、彼らは愚かでデマゴーグに翻弄されやすいとまで書くのだから。2020/11/26

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