内容説明
著作物の受け手、消費者としての市民の自由である「著作物を楽しむ自由と権利」の視点から、近年の最高裁判決、下級審判決を取り上げ、その著作権法解釈を憲法上の基礎概念によって批判的に検証する。現在の著作権法制に表現の自由、消費者法保護の観点から鋭くメスを入れ、新規な座標軸で研究、実務に注目される一書。
目次
序章 著作物を楽しむ自由とは
はじめに――プールの底のミッキーマウス
1 著作物を楽しむ自由――消費者法からの視点
2 「カラオケ法理」の誕生・展開・消滅
第1章 「表現の自由」と「著作物を楽しむ自由」――「パロディ写真」事件
はじめに――わが国著作権判例史上の最重要事件
1 東京地裁判決から第1次最高裁まで――パロディとフェア・ユース
2 隠れた争点――大量の複製物の1つの改変
むすび――2つの自由の交錯
第2章 プレイヤーの「ゲームを楽しむ自由」――「ときめきメモリアル」事件
はじめに――複製物商品と同一性保持権
1 メモリーカードによるゲーム展開のルール、手順の変更
2 大阪地裁判決――パラメータの数値設定はゲームのストーリーを改変しない
3 大阪高裁判決――「ゲーム映像」ともいうべき複合的著作物
4 最高裁判決――プレイヤーはゲーム製作者が創設した「主人公」である
5 各判決の問題点――プレイヤーはゲームの「主人公」か
6 本最高裁判決の下級審判決への影響――類似事案での援用
7 本最高裁判決の擁護論について――データと著作権保護の範囲
むすび――プレイヤーの「遊びの自由」
第3章 「アクセス権」と「編集権」の相克――「NHK女性法廷番組」事件
はじめに――裏切られた期待
1 東京地裁判決――NHKの行為は「放送番組編集の自由」の範囲内
2 東京高裁判決――自己決定権に基づき番組から離脱する自由
3 最高裁判決――番組への期待・信頼は法的保護の対象とならない
4 各判決の問題点
むすび――すり替えられた問題点
第4章 先端技術の開発者の刑事責任――「Winny」刑事事件
はじめに――無罪判決は技術開発を刑事罰から解放したか
1 ファイル交換ソフトとは
2 京都地裁判決――不特定多数者にインターネットで提供すれば幇助犯を構成
3 大阪高裁判決――違法使用を勧めて提供しなければ幇助犯は成立しない
4 最高裁決定――著作権法違反罪の幇助犯の故意を欠く
5 本最高裁決定の問題点――「罪刑法定主義」、「一事不再理」の観点から
むすび――合憲性審査権はどこへ
感想・レビュー
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トーテムポールさん