内容説明
病気を感じる人たちがいるから医学があるわけで、
医者がいるから人びとが
彼らから自分の病気を教えてもらうのではない。
――ジョルジュ・カンギレム『正常と病理』より
■内容
これまでの医学史は、
患者をないがしろにしたまま、
医師の手柄話、治療法や試行錯誤の過程など、
もっぱら医師たちに焦点を当てつづけてきた。
しかし、医学者だけが英雄なのか
当前のことだが、患者なくして医学の発展はなかった。
野戦病院や臨床の現場、検査室、診察室で
自らの身体や傷口を辛抱強くさらしてきた者たちこそが、
医学の歴史に大きな貢献をしてきたのだ。
隔離されたチフスのメアリー、
上流階級の見世物にされた女性ヒステリー患者、
ある仮説のために女として育てられたデイヴィッド、
死してなお自らの細胞を研究されつづけたヘンリエッタ、……
本書では、輝かしい歴史の裏側に埋もれた、
病者たちの犠牲と貢献にスポットを当てていく。
コロナ後の世界において、
最初に感染した者たちへのバッシングは絶えない。
しかし、犯人捜しにも魔女狩りにも意味はない。
Covid-19の感染拡大を受けたロックダウン宣言の直前に
フランスで出版されたこの本に登場する患者たちの物語が、
私たちにそのことを教えてくれるだろう。
■「Patients Zero」とは
感染症学では、集団内で初めて特定の感染症にかかったと見なされる患者のことを「インデックス・ケース」または「ゼロ号患者(ペイシェント・ゼロ)」と呼ぶ。微生物やウイルスの研究が進み、詳しいことがわかるようになるにつれ、ときに最初の感染者を特定できるまでになった。本書では、この「ゼロ号患者」という言葉の意味を医学、外科医学、精神医学、薬理学のあらゆる分野に意図的に拡大解釈して適用することにしている。
目次
【目次】
日本語版によせて/はじめに
第1章タンタン
第2章麻酔のゼロ号患者たち
第3章人格が変わってしまったフィネアス
第4章ヒステリーのヒロインたち
第5章ジョセフ少年
第6章ニューヨークの女性料理人
第7章アウグステ
第8章ジェンダーの蹂躙
第9章ふたつの特別な数字
第10章ウンサの沈黙
第11章永遠に生きるヘンリエッタ
第12章海馬の冒険者たち
第13章マッキー夫人
第14章無原罪の御宿り
第15章吐き気を催す事件
第16章ジョヴァンニのアポリポタンパク質
第17章悪魔と奇跡の生還者
第18章いつもと違うインフルエンザ
第19章脳のない男
おわりに/参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
R
kawa
こばまり
にゃおこ