内容説明
文化5年京都祇園、お茶屋の娘が病を治す!
「うち、先生のお手伝いをしとおす。人助けのために生きとおす」
現役の精神科医である著者による、さわやかな医療時代小説!
文化5年(1808)、京都は祇園末吉町で50年以上続くお茶屋「よし屋」の一人娘・月江は、舞妓として日々芸事の修業に勤しんでいた。
この年16歳を迎える月江は、母親の跡を継いで「よし屋」の女将になることを望まれていたが、新年早々、常連である御幸町の医師・小島源斎がよし屋を訪れ、月江を預かって女医者にしたいと申し出る。
源斎の言いように最初は腹を立てた母親だったが、月江の思いを汲んで、源斎の手伝いを許してくれる。
月江は当初、能筆であること、書物に通じていることから医学書の筆写を任された。だが、やがて癲狂を患う生糸問屋の娘・小雪の治療を手伝うことになって‥‥。
医師らしい江戸時代の医療の知識のほか、当時の祇園花街の風俗が丹念に描き込まれた、読後さわやかなエンターテインメント時代小説。
『釣りバカ日誌』原作・やまさき十三氏、推薦!
「今世紀精神医学界の巨星アンリ・エーの翻訳家でもある異才が、古都を舞台に小説(フィクション)を書いた。」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のびすけ
30
京都祇園のお茶屋の跡取り娘月江は、舞妓のお勤めもしながら、医者の源斎先生を手伝う。重い精神病を患う小雪と、小雪の心を取り戻そうと懸命に世話をする月江。精神科医でもある作者さんならではの真に迫った文章に引き込まれた。舞妓としての月江に目を付けた三左衛門には嫌な感じがしてたけど、最後に母喜久江が覆してくれてよかった。2023/02/24
豆乳くま
20
お茶屋の一人娘月江は医者の源斎に見出され現夢和尚の元学問に励む十六歳。学問をしたいが母はお茶屋を継ぐべく舞妓に出ろと言う。舞妓の修行をしながら源斎の元で医学書の写本をする事になるが、狐憑きの娘を助けて欲しいと大店の主人からの依頼が。精神科医の作者が江戸時代の京都祇園を舞台に女でありながら医者を目指し、更に今までにない精神科的な分野を取り上げるのは斬新。月江と現夢和尚のやり取りは月江を正しく導きどんどん成長させ読んでいても嫌味が無くスッと心に入ってくる感じがとても良かった。続きはあるのかな?読んでみたいな。2022/09/13
陽ちゃん
7
初読みの作家さん。祇園のお茶屋の娘である月江は学問好きで母の幼なじみである医者の源斎を慕っていますが、母から跡取り娘として舞妓になるよう言われ、従いますが、本心は源斎の手伝いをしたくて…。狐憑きと言われ座敷牢に入れられていた大店の娘小雪に寄り添う姿はカウンセラーですね。ラストの母喜久江の決断には驚きました。2021/02/14
yoshigon
4
祇園のお茶屋の娘である月音が舞妓の修行をしながら、療治所の手伝いも始める。狐憑きと言われる娘の治療に関わり始めた月音の頑張りがものすごい。両極端のようにも思われるが、奥底にある大事なものは同じものだったのかな。 2024/04/01
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4
悪役はいるけど悪人は出てこないお話。面白かったです。 個人的には月江さんにはこのままお茶屋で活躍して、先々は祇園を仕切る重鎮になってもらいたいと思うのだが。2021/07/26