角川ソフィア文庫<br> 江戸のコレラ騒動

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角川ソフィア文庫
江戸のコレラ騒動

  • 著者名:高橋敏【著】
  • 価格 ¥1,100(本体¥1,000)
  • KADOKAWA(2020/12発売)
  • ポイント 10pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784044006402

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内容説明

黒船来航直後、幕末の江戸を大地震が襲った。安政5年、これにコレラが追い打ちをかける。3日で死ぬといわれたコレラ。それを操るとされた悪狐を倒すため、強い霊力を持つ御神犬や御札を求め、さらには京から神社を勧請。無礼講の祝祭に走った。当時の人々がどのようにコレラと闘ったのか、東海の村に残る記録から再現。民衆の迷信と笑えない。新型コロナ騒動を彷彿とさせる、おかしくもたくましい庶民たちの姿を活写する。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

HANA

72
江戸末期に流行した「そく死之病」コレラ、本書は当時の庶民がそれに対してどう対応したかを庶民の日記を基に論じた一冊である。主な舞台として伊豆・駿河が取り上げられているが、この地方だとコレラの主原因がアメリカ狐とされた事で三峰山の御犬の力を借り退散させようとするのは興味深い。他にも京都吉田神社の勧請とかも例に出されているが、勧請された神社が現在も守られているのはいいなあ。後半江戸の状況も描かれているが、こちらはコレラが猖獗を極める様子が印象に残る。それを洒落のめす強さも。当時の人々の心性が見えるいい本でした。2023/09/03

パトラッシュ

57
黒船来航と政情不安、地震に津波とコレラが続いた幕末は災厄の集中期か。庶民は恐怖に震えながら信仰にすがるしかなかった実態を、各地に残された記録から明らかにする。神社を勧請したりお札や神犬を求めるなどの除災儀礼を試みる姿を、当時の人びとより情報や知識はあってもコロナにろくな対策のできない政府しかない現代人は笑えないだろう。コレラを洒落のめした様々な印刷物も、迫りくる死から目をそむける手段でしかなかった。こうしてたまった負のエネルギーが爆発したのが「ええじゃないか」の大流行とは、幕末史を見る新しい補助線になる。2021/03/01

bapaksejahtera

18
2005年刊で絶版だった本を、今次コロナ禍を機に文庫として再出版した。宮田登等から始まる野外調査に基づく、歴史民俗学の一翼を担う真面目な本である。近年の出版事業の儚さを象徴する。幕末明治にかけ我が国を頻繁に襲ったコレラ禍は、特に安政5年の夏の短い間に全国で数万の死者を出した。その病状発現の急激と高い致死率からなす術もない人々は、直前の安政地震や余儀なく締結した対外条約への不安もって、流言に踊り信仰に走る。その様を駿河国の民間文書等に探る。江戸の戯作者は今日では問題になるだろう戯文で悲惨な社会を洒落のめす。2023/07/01

やまはるか

17
インドに土着していたコレラ菌が植民地化で世界に広がり、日本には第3次パンデミックにより、安政5年(1858年)、長崎に入港したアメリカ軍艦の乗組員から伝播、またたく間に江戸に伝わった。治療法なく3日コロリと呼ばれ即死病としておそれられた。幕末体制はアメリカ艦船を警戒し、狼煙の準備のためオオカミの糞集めを指示する程度でコレラの有効な予防を講じず、庶民はアメリカ狐に対抗して京都吉田神社や三峯山の札を掲げ、江戸では祭りの狂騒や洒落のめすことでコロリに打ち勝とうとした。コロナ禍の狂騒と比較し大いに興味深く読んだ。2023/03/31

宗次郎

14
解説が小松和彦氏という時点で迷わず買い。文庫化した経緯も少し面白い。「江戸の」とあるが江戸についての話は一部であり、幕末期におけるコロナ騒動と異国の関連を庶民目線で見るという本。未知の病や異国に後手後手対応の幕府がどうしても現状とダブる。確かに我々は負のエネルギーを抱えて生活している。アフターコロナの世界で世界中のそのエネルギーが良い方向に向かうことを祈る。2021/01/15

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