内容説明
地理的には遠い札幌市と鹿児島市は、歴史を読み解くと深いかかわりがある。幕末の名君・薩摩藩第11代藩主の島津斉彬は、後に倒幕・維新の主役となる西郷隆盛や大久保利通らを見出し、重要な役職に抜擢した。大久保は、殖産興業、富国強兵策を明治国家の柱に据え積極的に展開し、西郷は水戸藩・藤田東湖の薫陶を受け蝦夷地に強い関心を抱いた。西郷の熱烈な信奉者が黒田清隆であり、彼は維新後、大久保が打ち出した殖産興業政策を背景に、北海道開拓事業の最高責任者となった。日本の近代国家建設の指導者となった彼ら薩摩人にとって、島津斉彬の理念とイメージは死後十数年の時を経て、北海道の「開拓使」に引き継がれ、北の大地で実現したのである。
目次
1 はじめに
2 薩摩藩の概要
3 薩摩藩の時代背景
4 島津斉彬の蝦夷地開拓計画
5 西郷隆盛と藤田東湖の交わり
6 開拓使設置と諸藩の分領支配
7 黒田清隆の登場と開拓行政
8 開拓事業の進展
9 明治新政府における西郷の活躍と苦悩
10 屯田兵の設置
11 開拓使と鹿児島出身官僚
12 北海道3県1局時代
13 北海道庁の設置と薩閥官僚の一掃
14 蝦夷地開拓を目論んだ水戸・佐賀・土佐藩
15 坂本龍馬、蝦夷地開拓に夢かける