- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
「まず読者の皆様にお伝えしたいのは、世間で評判になっている映画だけを見るのではなく、自分にふさわしいものを自分で見つけてほしいということです。とにかく、ごく普通に映画を見ていただきたい。蓮實個人の視点など学ばれるにはおよびません」――サイレントから、ドキュメンタリー、ヌーヴェル・ヴァーグ、現代ハリウッドと日本まで。120余年の映画史を俯瞰する、シネフィル教授による最初で最後の新書講義。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
226
「映画を見る際に重要なのは、自分が異質なものにさらされたと感じることです。自分の想像力や理解を超えたものに出合った時に、何だろうという居心地の悪さや葛藤を覚える。そういう瞬間が必ず映画にはあるはずなのです。今までの自分の価値観とは相容れないものに向かい合わざるをえない体験。それは残酷な体験でもあり得るのです」 溝口健二映画を見ざる者、映画を語るべからず。デヴィッド・ローリーを高く評価。アサイヤスとスコセッシが世界で最も過大評価されてる。ディズニーをバッサリ斬る。など、異質な映画評論にさらされる興奮あり。2021/03/21
アキ
88
語りを文字起こししているので、同じ内容を何度も繰り返している。著者が日本映画の至宝と絶賛している女性ドキュメンタリストの小森はるかさんと小田香さん。小森さんの「息の跡」、小田さんの「セノーテ」観たくなりました。アメリカの監督デヴィッド・ロウリー「さらば愛しきアウトロー」も絶賛している。物語がある娯楽は小説と映画だけだが、映画は物語だけを表現するのではなく「細部が見せる一種の色気」が映画の面白いところと云う。85歳にして「ジョン・フォード論」を執筆中。そのバイタリティには頭が下がります。2021/05/24
Aster
52
蓮實節って言うんですかね、蓮實重彦と言えば浅い文学士供にハスミンだの揶揄されているイメージ。そうしたい気持ちは分からなくもないが…。自分は単純に好きですね、これを読んだ限りでは。良かったですね、こういう客観的なのか主観的なのかよく分からない誠実な語りをまぁ中々見たことがなかったので。お前は映画好きではないとぶん殴られた気分です。そんなことは意図していないと思うのですが。ただ自分が今まで映画の評価を言語化と情報公開のフィルターでぐちゃぐちゃにしてしまっていたことに気づけた。俺はまともに映画見てたのか?2020/12/29
Isamash
36
26代東大総長で映画評論家の蓮實重彦2020年発行著書。米国監督ではデヴィッド・ローリー及びケリー・ライヒャリトルを、ドキュメンタリー監督では小田香及び小森はるかを評価。全く知らず、興味を覚えた。「寝ても覚めても」の高評価には同意も「旅のおわり世界の始まり」は自分にはつまらなかった。ショットや動きに重きを置く姿勢には共感覚えたが脚本には興味無さそう。撮影監督に注目は共感。川又昴、姫田真佐久、宮川一夫、ヤヌス・カミンスキーによる映像は確かに個性的で魅力大。日本でプロデューサー不在指摘には成る程と思わされた。2022/12/04
ころこ
35
文体がおかしい!インタビューの書き起こしであっても本を出版する以上、齢80を超えてニーチェ言うところの中動態的な「子ども」になったことが最も驚きですが、じつはこれも作為のひとつでしょう。批評のちからとは、批評家のものの見方の感染力にありますが、また良い悪いの判定だけでも、彼がそう判定するのであればと批評家のちからがあれば成り立ち得る。これだけはっきり書いてあると、文体も何も無い訳ですが…2021/01/19