内容説明
1995年1月、地震はすべてを一瞬のうちに壊滅させた。そして2月、流木が燃える冬の海岸で、あるいは、小箱を携えた男が向かった釧路で、かえるくんが地底でみみずくんと闘う東京で、世界はしずかに共振をはじめる……。大地は裂けた。神は、いないのかもしれない。でも、おそらく、あの震災のずっと前から、ぼくたちは内なる廃墟を抱えていた――。深い闇の中に光を放つ6つの黙示録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
594
阪神淡路大震災があったのが1995年の1月。これら6篇の連作短編は地震後、即座に書かれたのではないが、村上春樹にとってはなんらかの形で、その未曽有の経験を決済しておく必要があったのだろう。いずれの作品も間接的にだが、この地震に関わりを持っている。巻頭の「UFOが釧路に降りる」が、もっとも不可解な部分を有していて哀しみも深いが、物語を重ねるごとに希望への展望が開かれていくように思える。巻末の「蜂蜜パイ」の淳平は、作家自身にいくぶんかは重なり合うし、畢竟は「書く」ことにおいて哀しみを超克していくしかないのだ。2012/11/24
ehirano1
332
「蜂蜜パイ」について。「こころ(夏目漱石)」を所々に感じながらの心温まる読書になりました。「何かをわかっていることと、それを目に見える形に変えていけるということは、また別の話なのね」は本作品のテーマだったのではないかと思ってます。2025/07/14
HIRO1970
305
⭐️⭐️⭐️村上さんの短編集です。こんな表現使った事無いけど、珠玉の作品ってこんな作品の事を言うような気がします。どれも神戸の震災に触発された感じがあり、全く表現描写は違うのですが、もの凄く引き込まれてしまう、素晴らしい作品でした。様々な時間軸の中で掛け違ったボタンの様な物が時には明確に時にはぼんやりと感じられました。名作です。2014/05/06
ミカママ
290
【2016年読み納め&再読】初読みにするつもりだったんだけど、このやり切れなさは、大晦日の今日にふさわしかった。「いくら待ったところで、いくら考えたところで、ものごとはもう元には戻らないだろう」春樹さまの黙示録。2017/01/01
Nobu A
225
村上春樹著書何冊目だろうか。本サイトに登録する前から読んでいるので不明。少なくとも2桁には及んでいる。国民的人気作家だけについ手に取ってしまう。今回は読書会課題本として。相変わらずの現実と非現実の狭間を行き来する筆致で寓話性を帯びた物語は彼のアイデンティティーなのだろう。但し、一読者としては好き嫌いが分かれるところ。個人的には後者。最も気になるのが、読了後にあまり印象に残るものがないこと。阪神・淡路大震災が底辺にあるということだが、朧げながらでメッセージ性も決して強くない。やはりハルキストにはなれない。2025/09/21




