内容説明
秋が終り冷たい風が吹くようになると、彼女は時々僕の腕に体を寄せた。ダッフル・コートの厚い布地をとおして、僕は彼女の息づかいを感じとることができた。でも、それだけだった。彼女の求めているのは僕の腕ではなく、誰かの腕だった。僕の温もりではなく、誰かの温もりだった……。もう戻っては来ないあの時の、まなざし、語らい、想い、そして痛み。リリックな七つの短編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
457
『蛍』は、予備知識なしに読み始めたものだから、最初はデジャ・ヴュかと錯覚した。『ノルウェイの森』だったのだ。しかし、この作品は『蛍』のままでも、十分に味わい深いし、エンディングの蛍のシーンは、はかなくて美しい。これに続く『納屋を焼く』は、まさしく「リアリティは細部に宿る」という感じだ。たとえば、「彼」とマリファナを吸う場面で、「僕」が「学芸会の舞台のざわめきとか背景のボール紙に塗られた絵の具の匂い」を思い出すところなど。それとは逆に、こうした細部のリアリティがグロテスクに展開するのが『踊る小人』だ。 2012/07/11
Aya Murakami
222
令和元年新潮文庫紅白本合戦 踊る小人がなかなかの恐怖物。音楽そのもののように踊る小人は魔性の魅力です。美しく見事な踊りにはもちろん毒があって思い人がいる主人公を破滅の道にいざないます。 革命前は戦前、革命後は戦後のオマージュでしょうか?小人の魔力は革命前の宮廷でも暗躍したとか。美しさ魔力の恐怖はいつの時代もかわらないということか。2020/05/08
おしゃべりメガネ
220
時を遡ること今からおよそ30年も前に刊行された本作は、ご存じの方も決して少なくはないと思われるあの『ノルウェイの森』の原点?ともいうべき短編「螢」が収められています。30年前も今も村上春樹さんはかわることなく、ただ読んでもよくわからない作品を書き続けていることが改めて実感できました。後半に読み進めれば進めるほど「???」な世界が展開され、後半はひたすら文字を追うことに必死になっていました。しかし「納屋を焼く」や「踊る小人」は比較的、わかりやすい村上ワールドを楽しめましたが、やっぱり難解かつ不思議でした。2015/11/22
ショースケ
197
感想を書くのが難しい。全体的に不思議な世界観とトリッキーな話しでいっぱいだった。『蛍』はノルウェーの森の原型という。そういえば同じ空気が漂っていた。最初からそういうつもりだったのだろうか。それともその後ノルウェーを考えたのだろうか。『納屋を焼く』は深読みするとゾクっと怖い。納屋は焼けず女が消息を絶った…コワッ。『踊る小人』も最後は逃げ回る羽目になった…コワッ。昭和50年代の村上春樹の「小説を書くことはとても好きです」の言葉にグッときた。読友さんのおかげで昔の村上氏の世界観を垣間見れた。面白かった。2021/08/17
Apple
170
「螢」「納屋を焼く」「踊る小人」「めくらやなぎと眠る女」どれも印象に残るような話でした。「納屋を焼く」が特に良かったと感じましたが、彼が言う納屋を焼くとの意味は最後までよく分かりませんでした。冒頭の、彼女の蜜柑剥きパントマイムに関する台詞「そこに蜜柑があると思い込むんじゃなくて、そこに蜜柑がないことを忘れればいいのよ」が何か示唆しているのでしょうか、あとは彼の語る同時存在について。少し考えてみたんですが、全く分かりませんでした。「螢」は、結局ほたるの小さい光だけが残って寂しい話だと思いました。2022/05/07
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