内容説明
誰もが良いことをしているつもりだった。いったいどこで間違えたのか?
新たな科学の発想や発明が致命的な禍いをもたらすことがある。
十分な検証がなされず科学の名に値しないまま世に出てしまったものはもちろん、科学としては輝かしい着想や発明であったにもかかわらず、人々を不幸に陥れることがあるのだ。
過ちを犯してしまった科学が「なぜ」「どのような」経緯をたどってそこに至ったのかを、詳しくわかりやすい物語として紹介する、迫真の科学ドキュメンタリー。
目次
はじめに
第1章 神の薬 アヘン
第2章 マーガリンの大誤算
第3章 化学肥料から始まった悲劇
第4章 人権を蹂躙した優生学
第5章 心を壊すロボトミー手術
第6章 『沈黙の春』の功罪
第7章 ノーベル賞受賞者の蹉跌
第8章 過去に学ぶ教訓
エピローグ
参考文献
索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
160
科学の進歩は歓迎すべきことだし、科学者は誰もが新技術の開発が正しい未来をもたらすと信じたはずが人類の歴史に深い傷痕を刻んでしまった。アメリカにおける鎮痛剤中毒の蔓延ぶりは異常なほどだし、優れた人を創らんとした理想がナチスの強制収容所やロボトミー手術に繋がった。自然保護の重要性を訴えたカーソンの『沈黙の春』は殺虫剤を邪悪視させ、マラリアの犠牲者を増やした。パンドラの箱に最後に残った「希望」がデータを軽視し空気に流され手っ取り早い効果を望む人の性を生んだのだとしたら、希望こそ人類最悪の厄災だったことになるが。2022/05/17
kinkin
110
先日、NHKでアヘンがもたらしたことを、特集で放送していた。アヘンからモルヒネ、ヘロインへと人は医療と同時に快楽のために麻薬を使ってきた。アヘンチンキを子供を大人しくさせるために飲ませたという話は驚いた。ロボトミー手術のことは知っていたが、この手術でノーベル賞を手に入れた医学者、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」で殺虫剤が槍玉に上がり、そのせいで逆に命を落としたという人のことなど、他全体を通して興味深い本だった。図書館本2025/02/24
honyomuhito
76
人類の壮大なトライ アンド エラー集。アヘン、マーガリン、化学肥料、優生学、ロボトミー手術、殺虫剤、ビタミン剤。人類のトライアンドエラーの犠牲は思っていた以上に甚大である。エラーはエラーだと認識すること自体が難しく、それぞれの出来事は今でこそそんなバカなと思うが当時はプロの科学者たちが真剣に研究した結果なのだと思うと空恐ろしい。しかし現在まさに全世界でパンデミックと交戦真っ只中の人類としては読んで納得できることも多い。この本に出てくる科学の暴走と今のパンデミック何が違うのか考えてみるのがいいかもしれない。2021/01/14
R
69
科学の功罪の罪について考えさせられる一冊だった。アメリカンジョークじゃないが、科学は常に進歩してるから答えが変わるのはよくあることながら、優生学のような思想の一種や、ロボトミーのような検証不十分な外科術式などの変遷は、今も似たことが起きているのではないかと恐怖する内容だった。人類の発明において、アヘンの罪は疑いようもないところだが、ハーバーボッシュ法を悪としているのは、非常に考えさせられる内容だった。大衆を扇動するような結果を呼ぶ、様々な最先端技術について、なんでも鵜呑みにしないように気をつけたい。2021/05/17
ふみあき
64
食料危機から人類を救う窒素肥料とともに、大量殺戮をもたらす毒ガス兵器も開発したハーバーや、悪名高いロボトミー手術の生みの親のフリーマン等、知ってる人物の話もいくつかあったが(おそらくNHKの「フランケンシュタインの誘惑」で観たのだろう)、環境活動家の元祖レイチェル・カーソンに関する第6章が最も興味深い。彼女のDDTに対する宗教的な敵愾心がマラリアを再び猖獗させ、数千万人の子どもを死に追いやったという事実は科学史に銘記すべき(ゼロ・トレランスに拘泥する一部リベラルの人たちは気に食わないかもしれないが)。 2021/10/27
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