講談社文庫<br> 殉教者

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講談社文庫
殉教者

  • 著者名:加賀乙彦【著】
  • 価格 ¥693(本体¥630)
  • 講談社(2020/12発売)
  • 蝉しぐれそそぐ!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント25倍キャンペーン(~8/3)
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  • ISBN:9784065211182

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内容説明

1614年、2代将軍徳川秀忠がキリシタン禁教令を発布した。キリシタンへの迫害、拷問、殺戮が頻発し、岐部は殉教者の記録を集める。翌年、28歳の岐部はエスパニア人修道士と共に長崎から船出、40日の航海の後にマニラ港に着く。そこで入手した地図には、双六のように、マニラを振り出しに、マカオ、マラッカ、コーチン、ゴア、ポルトガルの要塞のあるホルムズ島、さらにペルシャ砂漠、シリア砂漠、遂にはエルサレムに到達する道筋がこまかく描かれていた。岐部は自らの信仰を強くすることと、イエスの苦難を追体験することを思い、胸を躍らせた。
ペトロ岐部は1587年に豊後の国東半島で生まれ、熱心なキリシタンの父母の元で育つ。13歳の時に一家は長崎に移り、岐部はセミナリオに入学を許される。ここでラテン語を習得し、聖地エルサレムと大都ローマを訪れることを強く決意する。
次に訪れたマカオでは差別に耐えながら志を貫き、何とか旅費を工面して、ミゲルと小西という二人の日本人とともに海路、インドのゴアに向かう。ゴアからローマに向かう船に乗る二人と別れた岐部は、水夫として働きながらホルムズ島に向い、そこからは駱駝の隊商で働き砂漠を通ってエルサレムを目指す。
1619年、岐部はついに聖地エルサレムの地を踏む。そこから徒歩で、イスタンブール、ベオグラード、ザグレブを経て、ヴェネツィアに。祖国を出て5年、岐部はついにローマにたどり着いた。海路で1万4500キロ、徒歩で3万8000キロ。乞食のような身なりの岐部に施しをしようとした神父が、流暢なラテン語で話す岐部に驚き、イエズス会の宿泊所に案内される。そこで岐部は、4日間にわたる試験を受け合格、イエズス会への入会を許された。
ローマとリスボンで2年間の修練を経て、帰国の許可を得た岐部は、キリシタン弾圧の荒れ狂う日本に向けて殉教の旅路についた。
信仰に生きた男の苛酷な生涯が荒廃した現代を照らす、著者渾身の書下ろし長篇小説。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

佐々陽太朗(K.Tsubota)

72
私が参加している月イチの読書会の課題図書として読んだ。宗教嫌いの私が本書を読んでもあまり胸に迫るものはない。むしろペトロ岐部カスイは聖地エルサレムへの旅の途中で、エスパニア人によるフィリピン諸島植民地化などを目の当たりにしながら己が信教に何らの疑いを挟むことが無かったことにいらだちを感じる。この盲信ぶりが宗教の怖ろしいところであり、キリスト教に限らずあらゆる宗教が内包する危険性だと改めて確信するのである。しかし狭量を避け、自分とは異質の考えをも見聞するという意味で良い勉強になった。2021/09/30

Francis

14
加賀乙彦さんの本は「高山右近」についでに冊目。ペトロ岐部カスイは今日本の教会で彼の列聖を願う祈りがあるくらい有名だが、実際にはその生涯を良く知らないので読んでみた。加賀先生、よくここまでペトロの生涯に肉薄することが出来たと思う。最後の方で遠藤周作さんの「沈黙」に出てくる転びバテレンフェレイラが逃げ出す光景は痛快。遠藤さんに代わって禁教政策を取った江戸幕府を批判したのかな。2022/03/06

Midori Nozawa

8
病院の待合室で半分以上読むことができました。市の無料がん検診なのですが、約3時間かかりました。さて本書は殉教者を丹念に書いていることに感心しました。神父を送り込んだポルトガルや教皇庁のあるローマに、徳川政府のキリシタン迫害の様子が逐一文書で送られていることも驚きます。今と違って帆船での往来ですのに。ネットも電話も無い時代ですから。自分が犠牲になって十字架刑となり、信者たちの命を助けた人の遺体の中指がローマの教皇庁に届けられました。イエスの生き方を真にお手本とした人達の尊い姿を知ることができました。2021/09/01

Miyako Hongo

5
構想三十年と帯にあったので購入。読みかけの星夜航行と時代が被る。戦国末にエルサレムまで巡礼し、ローマを回り、殉死するために日本に帰ってきた殉教者の話。史実から主人公の心理を類推するとこんな感じだったんだろう、という小説家の妄想だが、ここに至る取材の執念を思うとなるほど30年だわなと納得できる。己の意思に殉じてあえて獣道を突っ走る人間は好物。2022/10/15

tegi

2
1615年から15年間かけてエルサレム・ローマまで到達しながらも日本に戻って殉教した日本人キリスト教徒がいたという史実に驚く。公的な後ろ盾や資金があるわけではまったくなく、行く先々で金を集めときにはラクダ使いとして行商の一行に加わるなど自身の才覚ひとつで聖地を目指す姿は冒険小説のようだ。一人称の語りでありながら、一部、往時の日本人キリスト教徒の認識を越えた現代的な視点が入っているようにも思えやや冷めてしまうところがあるのが惜しい。老齢の作家の、信仰・人物への思いが籠もった熱気とスピード感は悪くはないのだが2025/01/31

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