内容説明
件=牛から生まれ、人間の言葉を話すとされている。死ぬときに何か予言し、必ずその予言は当たると言われている。
奈良県葛城山山中で男女が遭難。発見された女性の遺体には獣に食い荒らされた痕跡があった。死体のまわりには牛のものと考えられる足跡があった。奈良県警の村口刑事は不可解な状況を不審に思う。
2ヶ月後、岡山県の山間部で、偶然件の誕生を目撃した大学生・美波大輔は何者かに追われる身に。彼は岡山での出来事を忘れようとするが、1週間後、件の予言通り現首相が急逝し、再び岡山を訪れる。
予言する牛の背後には「みさき教」という新興宗教団体の影が。明らかになった入信者の名前は明治以降の大物政治家や総理経験者財界人の名前が並んでいた。
戦前から日本の中枢を動かしていたのは件の予言だったのか!?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
131
件の小説というと内田百閒と小松左京の小説を思い出すのですが、田中さんにもこのような作品があったのですね。最初は怪奇小説と思っていたのですが、やはり田中さんらしくスラップスティックな感じがした小説でした。件が生まれて人の寿命をしゃべり死んでしまうということで、宗教的な団体などが関与します。最後は国会議事堂がなくなったりしてまたある国でまた件を生ませようとする試みがあるようです。2023/04/28
モルク
115
件は牛から生まれ、予言をしてたちどころに死ぬ。件の誕生から予言までを見てしまった大学生大輔は巻き込まれ命を狙われる。草食であるはずの牛が人を襲い内臓をむさぼり食らう。件の予言通りに首相が急死し、次期首相人事や政治家たちを牛耳っているみさき教とは何か。そして雄略天皇、一言神社などで民族学的な雰囲気もある。次々とこれでもかと人が死になかなかぶっ飛んだストーリー。でもちょっと風呂敷を広げすぎたかんじ。2022/06/30
ぶち
109
読友さんの「えー!とか、うわー!とか、はあー!とか、うへー??!とか、ヒイィィィ!とか」というレビューを拝見すれば、もうこれは読まずにはいられません。裏表紙の解説には。"伝奇ホラー"とありますが、私個人的にはホラー的恐怖感が少し足りなかったかな...でも、グロテスクな描写には溢れています。人間の狂気も存分に盛り込まれてて、充分に楽しめました。そして、実存の人物、地名、神社がどんどん出てきて、興味も掻き立てられました。 現実の世界でもなにかと騒がしい彼の国が絡んだ最後のオチには、うーむと唸ってしまいます。2021/05/02
タイ子
103
すごいな、これ。何がすごいって岡山県人の私にとっては「田中さん、書いちまったなぁ」って感じ。ご存じのように岡山は桃太郎伝説発祥の地として知られ、鬼伝説や鬼に因んだ場所も多々あります。そして、件と呼ばれる頭が人間、身体は牛という獣が疫病や戦争を予言するとも。この予言する牛を生ませようと秘密裡に画策する輩たち、恐ろしき野望の宗教が日本を席巻しようと暗躍する。地獄のような場所に足を踏み入れた4人の男女が見たのものは?ギャー!牛肉が当分食べられない;グロいシーンが多々あるのでご用心。面白い!岡山はいい所ですよ~。2021/01/10
オフィーリア
89
半人半獣の予言を行う妖怪、件をテーマにしたお話。冒頭から古事記が引用されていたりと、期待していた民俗学系ホラーの雰囲気が漂い期待は否応にも高まります。ところが早々に大和朝廷の時代から暗躍していたという壮大な設定をお持ちの秘密結社が登場し、期待していたお話の雰囲気を遥か彼方に置き去りにして物語のスケールは加速的にインフレの一途を辿り最後まで走り抜けてしまいました。正直伝奇物とこのストーリーの壮大さは食い合わせが悪いように感じましたが振り返ってみれば楽しかったなという結果オーライの読書でした。2022/05/06
-
- 電子書籍
- 2ピン芸人4 〈4巻〉
-
- 電子書籍
- 執事殿の愛猫 2巻 冬水社・いち*ラキ…
-
- 電子書籍
- 小学生おもしろ学習シリーズ まんが 世…
-
- 電子書籍
- 海外名作映画と巡る世界の絶景
-
- 電子書籍
- 茶の道そぞろ